賃貸借契約書や家賃台帳から、レントロール(各住戸の賃料・契約条件の一覧表)を手入力で作るのは骨が折れます。ChatGPT・Claudeに資料を読ませ、「出力する列」を決めておけば、そのままExcelやスプレッドシートに貼れる表をAIが下ごしらえしてくれます。本記事では、ツール導入なし・無料で使える作成プロンプトを配布。数字は資料の実額のみを使い、推測で埋めない・氏名など個人情報は入れない・最後は人が原本で検算する——という安全な設計にしています。
契約書や家賃台帳からレントロールを作りたい方、および手元のレントロールを読み解きたい方向けです。すでにレントロールをお持ちの方は、分析の章(稼働率・退去リスク・想定利回り)から読んでも使えます。AIが出すのは下書きの表で、最終的な数字・日付は必ず人が原本と突き合わせて確認してください。数戸〜中規模の物件やスポット作業に向く方法で、大量物件を厳密に一括処理したい場合は専用ツールの方が確実です(後述)。
ひとことで言うと、「契約書や家賃台帳を貼るだけで、決めた列のレントロール表をAIが作る」という話です。コツは、あなたの言う通り「出力する列(フォーマット)を先に決めておく」こと。型を渡せば、AIは資料から該当項目を拾って表に整えてくれます。作った表は、そのままAIに読ませて稼働率・退去リスク・想定NOIの要約まで進められます。作るのはAI、確認するのは人です。
レントロール(rent roll)は、賃貸物件の各住戸について賃料・共益費・契約期間・入退去状況などをまとめた「賃貸借条件の一覧表」です。一棟物件の収益力やリスクを一枚で把握するために使われ、売買・投資・賃貸管理の重要な資料になります。
契約書・家賃台帳から一覧表を作る。ChatGPT・Claude にそのまま貼れます。
できた表から稼働率・退去リスク・想定利回りを要約。すでに表をお持ちの方はこちらから。
契約書や家賃台帳を1件ずつ見ながら、部屋番号・賃料・共益費・契約期間・敷金礼金…と転記していくのは、戸数が増えるほど大変です。1室あたり数十分かかることもあり、桁や日付の写し間違い、コピペのズレも起こりがち。買取査定で契約書の束が届いた時や、バラバラの管理データをレントロールに整える時ほど、この"下ごしらえ"が重くのしかかります。
使い方はシンプル。契約書や家賃台帳を添付し、配布プロンプトを貼るだけです。ChatGPT・Claude は表・PDF・画像から文字を読み取れます。
賃貸借契約書・家賃台帳・入居一覧など。PDF・画像(スクショ)・貼り付けテキストのいずれでもOKです。
プロンプト全文を貼って送信。「Excelに貼れる表で」か「CSVで」を指定します。列を足したい/減らしたい時は、プロンプトの列をその場で書き換えればOK。
部屋数・賃料合計・契約日を原本で突き合わせて確認し、表をExcel・スプレッドシートに貼って自社フォーマットに整えます。
出力する列は、下の型をそのまま自社のレントロール・フォーマット(テンプレート)として使えます。駐車場・更新料・保証会社など、必要な列を足し引きすれば、いつもの体裁で出力できます。
| 出力する列(フォーマット) | 内容 |
|---|---|
| 部屋番号/間取り/専有面積 | 住戸の基本情報 |
| 月額賃料/共益費・管理費/駐車場代 | 収入まわりの内訳 |
| 敷金・保証金/礼金 | 一時金の条件(配布プロンプトでは別々の列にしています) |
| 契約開始日/契約終了日/契約形態 | 普通借家・定期借家の別と期間 |
| 更新予定/入居状況 | 更新月・入居中/空室(募集中) |
| 備考 | フリーレント・滞納・サブリース・特約などの注意点 |
①表(Markdown)=AIの出力をそのままコピペでExcel/スプレッドシートに貼る(いちばん手軽)。②CSV=「CSVで出力して」と指定し、メモ帳に貼って `.csv` 保存→Excelで開くと列がきれいに分かれます。③.xlsxファイル=ChatGPTのデータ分析機能なら、Excelファイルそのものを作ってダウンロードできます。
上の手順で使うプロンプトがこちらです。ダウンロードして、契約書や家賃台帳と一緒に貼り付けてください。特別なアプリや設定は不要です。
# レントロール作成プロンプト(契約書・家賃台帳 → 一覧表/コンプラ配慮) # 使い方:賃貸借契約書・家賃台帳など(PDF・画像・貼り付けテキスト)を添付し、この全文を貼り付け。 あなたは不動産の事務・レントロール作成担当です。 添付した資料(賃貸借契約書・家賃台帳など)から各住戸の賃貸借条件を読み取り、 下記フォーマットの「レントロール(賃貸借条件の一覧表)」を作成してください。 資料に書かれている事実だけを使い、書いていない数値を推測で埋めないでください。 ■ 出力フォーマット(この列で、Excel/スプレッドシートに貼れる表にする) | 部屋番号 | 間取り | 専有面積(㎡) | 月額賃料(円) | 共益費/管理費(円) | 駐車場代(円) | 敷金/保証金 | 礼金 | 契約開始日 | 契約終了日 | 契約形態 | 更新予定 | 入居状況 | 備考 | …(以下、サマリ(戸数/稼働率/賃料合計)・コンプラルール・出力形式(表/CSV/xlsx)の指定がつづきます)
テキストファイル(.txt)。ChatGPT・Claude どちらでも使えます。
頼み方の例: この賃貸借契約書(PDF3件)と家賃台帳(画像)から、レントロールを作って。部屋番号で名寄せして、Excelに貼れる表で。契約形態(普通/定期)と更新月は正確に。入居者名は表に入れないで。
出力サンプル(架空・主要列を抜粋/実際は全14列を出力): | 部屋番号 | 間取り | 面積(㎡) | 賃料(円) | 共益費 | 契約形態 | 更新予定 | 入居状況 | 備考 |
| 101 | 1K | 20.5 | 68,000 | 3,000 | 普通借家 | 2026年5月 | 入居中 | — |
| 201 | 1DK | 28.0 | 73,000 | 4,000 | 定期借家 | 2026年3月満了 | 入居中 | 再契約は要確認 |
| 102 | 1K | 20.5 | — | 3,000 | 該当なし | — | 空室(募集中) | 前賃料67,000 |
―――
総戸数12/入居11・空室1/稼働率91.7%
満室想定 月82.0万円・年984万円/現況 月75.3万円・年903.6万円(いずれも賃料のみ・共益費別)
▼要検算:部屋数・賃料合計・契約日を原本で確認
Excelに貼ったあとの集計は、不動産のExcel計算・関数をAIで自動化 にまとめています。
資料の作りによっては、一度で思ったとおりの表にならないことがあります。多くは資料側の書き方の揺れが原因で、プロンプトに一行足すだけで直ります。よくあるつまずきと、その見どころをまとめました。
| つまずき | 見るところ・対処 |
|---|---|
| 賃料の桁が違う(85,000円が8,500円になる) | 表をまるごと出させる前に、「戸数」と「月額賃料の合計」を先に出させて原本と突き合わせる。ここが合っていれば、各行の桁はほぼ信用できます。プロンプトに「金額は3桁区切り・単位は円で明記」と足すのも有効です |
| 面積が坪と㎡で混ざる | 資料側の単位表記が揃っていないケース。「専有面積は㎡で統一。坪表記の住戸は換算せず、原本の表記のまま別列に残す」と指定します。AIに換算させると、小数の丸めで面積がずれます |
| 資料ごとに面積が違う | 契約書・販売図面・登記簿で面積の取り方が異なる(壁芯/内法)ことがあります。「面積はどの資料を基準にするかを先に決め、出典を備考に残す」と指定を。AIに寄せ集めさせると、住戸ごとに基準が混ざります |
| 契約日が和暦と西暦で混ざる | 「契約開始日・終了日は西暦のYYYY-MM-DD形式で統一」と指定。和暦のまま残すと、あとでExcelの日付として扱えません |
| 部屋数が原本と合わない | PDFのページ落ちや、資料の一部しか読めていない可能性。資料を分けて渡し、最後に戸数を出させて照合します。スキャンが不鮮明なページは、そこだけ撮り直すか手入力に回すのが早いです |
| 空室の行が抜ける | 家賃台帳は入居中の住戸しか載らないことがあります。募集中の住戸は募集図面や管理表など別の資料を足して渡し、「入居状況の列に空室(募集中)と記載」と指定してください |
| 同じ部屋が2行出てくる | 更新前と更新後の契約書が両方まざっている状態。「同一の部屋番号が複数ある場合は最新の契約を採用し、前の契約期間は備考に残す」と指定します |
| サブリース(一括借上げ)の賃料をどちらにするか | オーナーが受け取る賃料と、入居者が支払う賃料は別の金額です。どちらを賃料列に入れるかを先に決め、決めていないほうは備考か別列へ。さらに、一括借上げの契約書は借主=サブリース会社の1通だけで、住戸ごとの入居者賃料が載っていないことも多いため、転貸借の一覧や管理会社の明細を別途もらう必要があります |
| フリーレント・定期借家が表から落ちる | 定期借家かどうかは契約書の頭書や契約期間の条項に、フリーレント期間は特約条項に書かれているため、賃料欄だけを拾うと落ちます。「契約形態(普通借家/定期借家)は必ず列に入れ、フリーレント期間・更新の可否・再契約の有無は備考に記載」と指定しておきます |
各行を上から突き合わせるより、戸数と月額賃料の合計を先に照合するほうが早く済みます。合計が合っていれば、あとは空室・サブリース・フリーレントなど条件が特殊な住戸だけを原本で確認すれば足ります。合計が合わないときは、抜けている住戸か、桁を読み違えた1行がどこかにあります。
レントロールは作って終わりではありません。同じファイルをもう一度AIに渡せば、稼働率・退去が重なる時期・収入のギャップまで要約できます。ここでは分析用のプロンプトも配布します。作るときと同じで、出てくるのは下書きです。
| AIが出せる項目 | 使いどころ |
|---|---|
| 稼働率・空室戸数 | 収益の現状把握 |
| 満室想定/現況の賃料合計 | 収入のギャップ確認 |
| 契約残・更新時期からの退去リスク | 今後6〜12か月で動きそうな住戸の洗い出し |
| NOI・表面/実質利回り(想定) | 買付価格の検討材料(あくまで想定) |
| 滞納・フリーレント・サブリース等の注意点 | 見落としがちなリスクの洗い出し |
配布プロンプトには購入検討価格・諸経費・運営費率を書く【前提】欄があります。空のままでも使えます。その場合は利回りを計算せず、稼働・収入・退去リスクの要約までを出す設計です。買付の検討に入ってから埋めれば十分です。
# レントロール分析プロンプト(不動産投資・買取・管理むけ/コンプラ配慮) # 使い方:下の【前提】を任意で埋め、レントロール(CSV・PDF・画像)を添付して、この全文を貼り付け。 あなたは不動産の投資分析担当です。添付した「レントロール(賃貸借条件の一覧)」を読み取り、 物件の収益状況とリスクを、実務者がすぐ使える形に要約してください。 記入・添付された事実だけを使い、事実にない数値やエリア相場を創作しないでください。 ■ 出力してほしい内容 1. 【稼働状況】総戸数/入居戸数/空室戸数/稼働率(%) 2. 【収入】満室想定・現況の月額/年額賃料合計(共益費・駐車場の内訳も) 3. 【契約・退去リスク】契約残・更新時期から、今後6〜12か月で動きそうな住戸 …(以下、収益指標(想定NOI/利回り)・要確認リスト・コンプラルール・【前提】記入欄がつづきます)
テキストファイル(.txt)。ChatGPT・Claude どちらでも使えます。
頼み方の例: さっき作ったレントロール(この表。お手元のCSV・PDFでも可)を分析して。購入検討は1.2億円、諸経費は価格の7%。稼働率・退去が重なる時期・想定NOIと想定実質利回りを、要検算メモの形で。入居者名は出さないで。
出力サンプル(架空の例): 【稼働状況】全12戸/入居11・空室1/稼働率91.7%
【収入】満室想定 月82.0万円・年984万円/現況 月75.3万円・年903.6万円(いずれも賃料のみ・共益費別)
【退去リスク】201号(1DK)は定期借家で2026年3月満了=再契約要確認/105号は契約残3か月
【想定収益】現況ベースの想定NOI 約723万円/年(年903.6万円−運営費20%と仮定=要確認)/想定実質利回り 約5.6%(価格1.2億+諸経費840万円=1億2,840万円で算出)。満室想定ベースなら想定NOI 約787万円・想定実質利回り 約6.1%
▼要検算:桁・合計・契約日を原本で確認
AIが出す収益指標は、渡した前提(価格・諸経費・運営費)から計算した想定値で、保証や確約ではありません。運営費が不明なときは「運営費未反映」と明記される設計にしています。またAIは相場データを持たないため、賃料が相場より高いか安いかは判断できません。相場は自社の成約事例やレインズ等で別途ご確認ください。投資判断や顧客提案に使う前に、必ず人が検算し、想定である旨を明記してください。
A. はい。賃貸借契約書や家賃台帳を添付してプロンプトを貼れば、AIが各住戸の条件を読み取り、一覧表を自動で下書きします。ただし出力は下書きのため、賃料合計・契約日は必ず原本で検算してください。
A. 賃貸借契約書・家賃台帳・入居一覧など、賃料や契約条件が分かる資料があればOKです。PDF・画像(スクショ)・貼り付けテキストのいずれからも読み取れます。情報が欠けている項目は「—」や「不明」で表に残ります。
A. 多くは拾えますが、桁・面積・日付の読み違いは起こりえます。そのためプロンプトは「実額のみ・推測で埋めない・最後に要検算の一文」を付ける設計です。作った表は必ず原本で突き合わせてください。
A. 使えます。表(Markdown)をコピペで貼るか、「CSVで出力して」と指定すれば列がきれいに分かれます。ChatGPTのデータ分析機能ならExcel(.xlsx)ファイルとして書き出すことも可能です。
A. 変えられます。プロンプト内の列の並びを、そのまま自社レントロールのフォーマットに書き換えてください。駐車場・更新料・保証会社など、必要な列を足すだけで反映されます。
A. 作成は契約書や家賃台帳から一覧表を「作る」もの、分析はできあがった一覧表を読んで稼働率・退去リスク・想定利回りを「要約する」ものです。レントロールがまだ無い方は作成から、すでにお持ちの方は分析だけでも使えます。
A. 法定の様式はなく、会社や仲介業者ごとに列の構成が異なります。配布プロンプトでは14列の型を用意していますが、自社の様式に合わせて列を書き換えて使ってください。
A. できます。CSV・Excel・PDF・スクリーンショット(画像)のいずれでも読み取れます。ただし不鮮明なスキャンは読み落としが出るため、桁と合計は原本で確認してください。
A. 記入した賃料・価格・諸経費から「想定」で計算します。運営費が不明なときは「運営費未反映」と明記されます。保証・確約ではなく、あくまで検討材料です。
A. AIは相場データを持たないため断定できません。配布プロンプトは「相場と比較のうえ要確認」と添える設計です。相場は自社の成約事例やレインズ等で別途ご確認ください。
A. 必ず人が検算・確認してください。数字の裏取り、利回りが「想定」である旨の明記、断定表現の回避を守ったうえで、検討材料として使うのが安全です。
A. 入れないでください。レントロールは部屋番号・条件が分かれば作れます。プロンプト側でも「氏名は表に含めない」よう指示しています。
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藤田 遼(株式会社WIG 代表/宅地建物取引士)
不動産業界での実務経験をもとに、現場でそのまま使える生成AIの活用法を研究・発信。「今日からコピペで使える」を合言葉に、不動産特化のAIノウハウを届けています。