間取り図AIは、ゼロから正確な図面を描く用途にはまだ届かず、手元の図面を清書してデザインをそろえる範囲であれば実用に近づいています。この記事では、同じ間取り図と指示文を主要3ツール(Claude・ChatGPT・Gemini)に渡した比較検証の結果をもとに、崩れやすい箇所と抑え方、業務に載せる前の確認事項をまとめました。AIにどこまで任せられるのか、線引きの判断がつくようになります。
「AIで間取り図が作れる」という情報を目にして試したものの、線がずれる、ドアが崩れるといった結果になり、実務で使えるのか判断がつかない——。この記事は、マイソクやポータル掲載用の図面を扱う不動産会社の営業・広告担当の方に向けて、同じ図面と同じ指示文を主要3ツールに渡した一次検証をもとに、AIに任せられる範囲の線引きを示します。「AIで間取り図が作れない」と感じた原因の多くは、ツールの優劣ではなく指示文と使いどころにあります。結論から言えば、間取り図AIはゼロからの作図には届かず、既存図面の清書とデザイン統一なら実用に近づく段階です。

・同じ図面と指示文をClaude・ChatGPT・Geminiに渡した比較検証の結果(数字は保たれ、形状に崩れが出る共通傾向)
・AIに任せられる範囲の線引き(ゼロからの作図は難しい/既存図面の清書とデザイン統一なら可)
・形状の崩れを抑える改善版プロンプトと、書き方の3つのコツ
・掲載前の原本照合・図面の権利と個人情報・専用ツールへの切り替え基準
同じ間取り図(東京カンテイ図)と同じ指示文を3つのAIに渡したところ、数字は保たれる一方で形状に崩れが出るという共通の傾向が見られました。結果を先にまとめると次のとおりです。
| ツール|数字の再現 | 形状の崩れ/総評 |
|---|---|
| Claude(Opus 5)|誤りなし | 多い(和室・物入れの建具)/数値は信頼できるものの、建具の描き分けが失われた |
| ChatGPT(GPT-5.6)|誤りなし | 少ない(ドア・収納内部)/3ツールの中で元の図面にもっとも近い仕上がり |
| Gemini(Flash)|検証対象外 | 元の図面と別物/清書の指示として受け取られなかった |
検証は2026年8月時点、各サービスで利用できるモデルを用いて実施しています。生成AIは同じ入力でも出力が変わり、モデルの更新でも結果が変わります。ここでの結果は特定時点の傾向として参照し、自社の図面で追試したうえで判断してください。
1-1. Claudeの結果:数字は保たれ、ドアの形状が崩れた Claude(Opus 5)の出力は、数値の再現性が高い一方で、形状の崩れがもっとも多く見られました。帖数や面積の表記に誤りはなく、「寸法や面積、構造を変更しない」という条件は守られています。崩れが集中したのは開口部の表現でした。和室の建具と物入れの扉が元の図面とは異なる形で描かれ、引き戸と開き戸の描き分けが失われ、扉の位置そのものがずれた箇所も確認できました。壁の位置や部屋の並びは保たれているため、縮小して見るぶんには成立しているように見えます。この「一見すると気づきにくい」点が、実務で使ううえでの注意点です。扉の種類と位置は入居後の家具配置や使い勝手に直結する情報であり、誤ったまま資料に載せればお客さまとの認識違いにつながりかねません。数値を守らせる指示は有効だった一方で、形状についても同じ強さで縛る必要があると確認できました。

1-2. ChatGPTの結果:崩れは一部にとどまった ChatGPT(GPT-5.6)も数値の誤りはなく、形状の崩れは限定的な範囲にとどまりました。3ツールの中では、元の図面にもっとも近い仕上がりです。崩れが出たのは、ドアの表現とウォークインクローゼット部分の2箇所でした。収納の内部形状が単純化され、元の図面とは異なる描かれ方になっています。全体の輪郭や部屋の配置は維持されているため、手直しの範囲は限られます。とはいえ、崩れがゼロになったわけではありません。仕上がりの良し悪しにかかわらず、出力後に元の図面と重ねて確認する手順は省けないでしょう。
1-3. Geminiの結果:指示を読み取れず別の図面になった Gemini(Flash)は、元の図面とはまったく異なる間取りを出力しました。清書という指示の意図を読み取れず、新しい間取り図を描いた形だと考えられます。この結果から分かるのは、同じ指示文でもモデルによって受け取り方が大きく変わるという点です。「きれいな間取り図にしてほしい」という表現は解釈の幅が広く、清書と作り直しのどちらにも取れてしまいます。今回は軽量モデルのFlashを使用しているため、上位モデルでは異なる結果になる可能性もあります。崩れの程度に差はあったものの、3ツールに共通していたのは指示文の曖昧さに引きずられた点でした。

1-4. 検証に使った図面と指示文 検証には、3LDK(洋室(1)約6.0帖、洋室(2)約5.0帖、和室約4.5帖、LDK約16.6帖)の間取り図と、仕上がりの見本となる完成イメージの2点を使用しました。3ツールへ渡した条件はすべて同一です。

添付の間取り図を、完成イメージのようにきれいな間取り図にしてください。
なお、寸法や面積、構造は変更しないでください。
あくまで、見やすくデザイン性を上げることが目的です。
この指示文は「変えてはいけない要素」を数値だけに限定しており、形状については何も縛っていません。3章では、この点を改めた指示文を紹介します。
検証結果から見えてきたのは、AIに任せられる範囲が「形を作る作業」か「見た目を整える作業」かで分かれるという点です。ここを取り違えると、試しても期待した結果になりません。
2-1. なぜ「AIで間取り図が作れない」のか(ゼロからの作図は現時点で難しい) 条件だけを伝えて間取り図を描かせる使い方は、現時点では実務に耐える水準に届いていません。画像を生成するAIは設計データを組み立てているのではなく、それらしい見た目の絵を描いているためです。結果として、壁の線が途中で途切れる、ドアの記号が壁に埋もれる、帖数と部屋の大きさが合わないといった崩れが起こります。人の目で見れば違和感のある図面であっても、AI側はエラーとして認識できません。寸法の正確さが求められる不動産の図面では、この性質が大きな制約になります。
2-2. 既存図面の清書とデザイン統一なら任せられる すでにある間取り図を読み込ませ、見た目を整える用途であれば実用に近づきます。形状をゼロから決める必要がなく、AIは色づかいや線の表現を変える作業に集中できるためです。具体的には次のような作業が該当します。
いずれも、元の図面がすでに手元にあるため準備の手間はかかりません。掲載済みの物件を1件選んで試せば、自社の図面でどの程度使えるかを短時間で確かめられます。ただし、この用途でも形状の崩れが完全になくなるわけではありません。1章の検証では、清書を指示した場合でもドアや収納の描かれ方に誤りが生じています。任せられるのは作業の中心であって、確認まで含めた工程すべてではないと押さえておきましょう。
2-3. 社内用と顧客提出用で使い分ける 任せる範囲の線引きは、その図面を誰に見せるかで判断すると分かりやすくなります。社内での検討やイメージ共有であれば、多少の崩れがあっても目的を果たせるためです。
広告として配布する図面は、宅地建物取引業法や不動産の表示に関する公正競争規約の対象になります。表示に誤りがあった場合に責任を負うのは事業者側であるため、最終的な仕上げは人の手か専用ツールに任せるのが現実的でしょう。
指示文を書き換えたところ、形状の崩れはほぼ解消しました。まず改善版の指示文を提示し、そのあとで書き換えのポイントを3点に分けて解説します。改善の要点は、AIに形を作らせず、元の図面を維持させたうえで見た目だけを変えさせることです。
添付の図面(3LDK:洋室(1) 約6.0帖、洋室(2) 約5.0帖、和室 約4.5帖、LDK 約16.6帖)の間取り・構造・寸法・文字情報をすべてそのまま維持し、完成形サンプルのカラーリングおよび清潔感のあるデザインスタイルを適用してください。
添付の図面(【間取りと各部屋の帖数】)の間取り・構造・寸法・文字情報をすべてそのまま維持し、【参考にしたいデザインの特徴】を適用してください。
完成イメージの画像を必ず添付する:文章だけで配色を指定するより、見本を1枚渡すほうが仕上がりのぶれが小さくなります。/「新しく描き起こさない」と明記する:清書と作り直しを取り違えるツールがあるため、生成そのものを止める一文を足しておきます。/図面はスキャンしたデータを使う:斜めから撮影した写真は台形にゆがみ、文字の読み取り誤りにつながります。
3-1. 形状はAIに描かせず元の図面を維持させる 崩れを抑える最大のポイントは、「そのまま維持」と明示して形状の生成を止めることです。1回目の指示文にあった「きれいな間取り図にしてほしい」という表現は、形を作り直す余地をAIに与えていました。「間取り・構造・寸法・文字情報をすべてそのまま維持し」と指定した結果、2回目の出力では形状の問題がほぼ見られなくなりました。AIに判断させる範囲を狭めるほど、意図しない書き換えは減っていきます。一方で副作用も生じます。元の図面をそのまま使う形になるため、仕上がりが元画像の解像度に左右されます。粗いスキャン画像を渡した場合、デザイン面の改善幅は小さくなると考えられます。
3-2. 部屋名と帖数を文章でも明示する 図面から読み取らせるだけでなく、部屋名と帖数をテキストでも併記すると、表記のぶれを抑えられます。AIは図面上の小さな文字を読み違えることがあり、誤読したまま清書が進むためです。改善版の指示文では「3LDK:洋室(1) 約6.0帖」のように部屋構成を書き添えました。それでも、出力された図面には数値の誤りが残っています。テキストで渡しても、AIが図面へ書き戻す段階で取り違える可能性は残ると分かりました。つまり、併記は誤りを減らす工夫であって、正確さを保証する方法ではありません。出力後の確認は、どの書き方であっても省けないと押さえておきましょう。
3-3. 変更してよい範囲を指示で限定する 指示文には、変えてよい要素を具体的に書き出しておきましょう。「デザイン性を上げる」という表現だけでは、AIがどこまで手を入れて良いか判断できないためです。
要素を名指しするほど、AIの解釈の幅は狭まります。指示文が長くなっても、修正の手間を考えれば書き込んでおくほうが結果的に早く済むでしょう。
間取り図AIを実務で使うときは、出力の確認手順と入力前の権利確認をセットで決めておきましょう。図面は広告表示の根拠になる資料であり、扱いを誤ると法令上の問題につながるためです。
4-1. 掲載前に数値と表記を原本と照合する AIが出力した図面は、掲載前に必ず原本と照合しましょう。検証では改善版の指示文でも数値の誤りが発生しており、書き方を工夫しても誤りが残ると確認できたためです。照合したい項目は次のとおりです。
とくに帖数と面積は広告表示の根拠になるため、1つずつ元の図面と突き合わせる必要があります。不動産広告における面積や設備の表示は、宅地建物取引業法や景品表示法、不動産の表示に関する公正競争規約の対象です。誤った表示を掲載した場合の責任は事業者が負います。確認を個人任せにせず、チェックリストとして社内で共有しておくと運用が安定します。
4-2. AIに渡す前に図面の権利と個人情報を確認する 図面をAIに読み込ませる前に、その図面を加工して良い立場にあるかを確認しましょう。間取り図は作成者に権利が生じる場合があり、他社が作成した図面を無断で加工すると問題になる可能性もあります。自社で作成した図面や、加工の許諾を得ている図面から試すのが安全です。調査会社や他社から取得した図面を使う場合は、利用条件を先に確認しておきましょう。あわせて、図面に記載された所有者名や住所などの個人情報にも注意が必要です。該当箇所を伏せてからアップロードする運用にしておくと、判断に迷う場面が減ります。
4-3. 精度を求める場面は専用ツールに切り替える 汎用の生成AIにこだわらず、専用ツールへ切り替える基準も決めておきましょう。作図の量が多い会社では、確認と手直しの時間が積み上がり、AIを使う意味が薄れてしまうためです。切り替えを検討したい状況は次のとおりです。
不動産業務向けには、いえらぶGROUP傘下のピーシーコネクトが提供する「いえらぶAI間取り」のように、間取り画像を取り込んで自動作成できるサービスもあります(参考:最短1分!間取り作成に特化した生成AI「いえらぶAI間取り」の提供開始(株式会社いえらぶGROUP)。※2026年8月時点)。汎用AIで限界を感じた段階で専用ツールの検討に進むと、判断がぶれません。
A. 部屋名と寸法が判読できる状態であれば、清書を試せる可能性はあります。ただし、線のかすれや文字の重なりがあると、部屋数の取り違えが起きやすくなります。手書き資料を扱う機会が多い場合は、スキャンして解像度を上げたうえで渡すと安定しやすくなるでしょう。
A. 間取り図をもとにした室内イメージの生成に対応するサービスも登場しています。ただし、実在しない設備や窓が描き加えられる場合があり、そのまま広告に使うと実際の物件と異なる印象を与えかねません。景品表示法や不動産の表示に関する公正競争規約の観点からも、イメージ画像を使用する際は実物との相違点を明示する運用が求められます。
A. 生成AIは同じ入力に対して常に同じ出力を返す仕組みではないためです。モデルの更新によっても結果は変わります。本記事の検証結果も2026年8月時点のものであり、再現性を確認したい場合は、自社の図面で複数回試したうえで判断すると確実です。
まずは自社で作成した図面を1枚選び、3章の改善版の指示文で清書を試してみましょう。どこまで任せられて、どこから手直しが必要になるのか、自社なりの基準を持てるようになります。
AIが作成・加工した図面を業務で使用する際は、宅地建物取引業法・景品表示法・不動産の表示に関する公正競争規約に抵触する表示がないか、宅地建物取引士など有資格者による最終確認をお願いいたします。帖数・面積・設備・方位などは掲載前に必ず原本と照合してください。他社が作成した図面の加工は権利関係を確認し、図面上の個人情報は伏せたうえでご利用ください。検証結果・ツールの機能や料金は2026年8月時点のものであり、変更されることがあるため、導入前に公式サイトで最新情報をご確認ください。本記事はAI活用の実務的な解説を目的とし、法的アドバイスを提供するものではありません。
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図面と並ぶ掲載素材、物件写真の補正。誇大表現を避ける補正の線引き。
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間取り図AIの「任せる範囲」を自社の運用に落とし込みませんか 株式会社WIG/不動産AI総合研究所は、図面清書のプロンプト整備、掲載前チェックリストづくり、公正競争規約に配慮した広告図面の運用設計まで、不動産のAI活用を支援しています。まずは無料のAI成熟度診断、または個別相談からお気軽にどうぞ。
藤田 遼(株式会社WIG 代表/宅地建物取引士)
不動産業界での実務経験をもとに、現場でそのまま使える生成AIの活用法を研究・発信。「今日からコピペで使える」を合言葉に、不動産特化のAIノウハウを届けています。