不動産SNSのAI活用は、投稿文を1本ずつ書かせるより、1か月分のネタ出しから任せるほうが成果につながります。この記事では、投稿カレンダーの作成、媒体別の投稿文づくり、公開前の広告表現チェックという3つの工程を、コピペで使えるプロンプトとあわせて解説します。SNS担当が1人しかいない会社でも、更新が止まらない運用の形を作れます。
不動産SNSのAI活用とは、投稿ネタの立案・媒体別の投稿文作成・公開前の広告表現チェックといった反復作業をAIに下ごしらえさせ、人は最終判断に集中する運用の仕組みを指します。 投稿ネタが尽きて更新が止まる、投稿文を書く時間が取れない、広告表現として問題ないか自信が持てない——。この3つで運用が続かず、成果が出る前にやめてしまう。この記事は、営業や事務と兼務でSNSを任されている担当者に向けて、投稿文づくりより先に「ネタ出し」をAIに任せるところから、1か月分のネタ→媒体別の投稿文→公開前の広告表現チェックという運用サイクル一式を、コピペ用プロンプトで組み立てます。

・SNS運用の5工程のうち、AIに任せる3工程(ネタ出し・投稿文・表現チェック)と人が担う2工程
・1か月分の投稿カレンダーを作るプロンプトと、物件紹介に偏らない「4分類」
・Instagram・X・地域情報向けに投稿文を量産する媒体別プロンプト
・宅建業法32条・景表法・表示規約で公開前に点検するプロンプトと、担当者が変わっても回る仕組み化
不動産SNSでAIの効果が最も大きく出るのは、投稿文を書く工程ではなくネタを考える工程です。多くの会社は投稿文の作成からAIを試しますが、更新が止まる原因はそこにありません。いえらぶGROUPが2025年1月に公表した調査では、SNS運用をやめた不動産会社の理由の1位が「担当できる社員がいない」(17.6%)でした。同じ調査で、今後SNS運用をしたいと答えた不動産会社は72.2%に上ります(参考:いえらぶGROUP プレスリリース)。やりたい意欲はあるのに担当者の負荷で止まっている構図で、毎日「今日は何を投稿しよう」と考える時間こそが、その負荷の正体といえるでしょう。ここをAIに任せるところから始めます。
1-1. AIに任せる3工程と、人が担う2工程 SNS運用は5つの工程に分解できます。この切り分けを先に決めておくと、AIに何をどこまで任せるかで迷わなくなります。
このうちAIが下ごしらえを担えるのは、ネタ出し・投稿文の作成・表現チェックの3工程です。本記事では2章から4章にかけて、この3工程それぞれのプロンプトを紹介します。

1-2. 大手の導入事例が示す、効率化の本当の要因 大手の事例を見ると、成果を生んだ要因が文章生成そのものではないと分かります。東急リバブルとアルサーガパートナーズは、生成AIを組み込んだSNS投稿文章作成システムを共同開発し、2024年11月から運用を開始しました。同社の発表によると、不動産情報の読み取りから投稿文章の原案作成までをAIが担い、担当者が修正する形にしたことで、1件あたりの作業時間を45分から10分へ短縮し、SNS投稿件数を4倍程度まで拡大できるとしています(参考:東急リバブル プレスリリース。※2024年11月時点)。注目したいのは、同社がAIへの指示をすべてパターン化した選択メニューに変え、専門性の高い属人的な業務を一般的な業務へ転換しようとしている点、そして不動産広告にふさわしくない表現を禁止ワードとして登録し自動的に排除する機能を組み込んでいる点です。この2つは大規模なシステム開発をしなくてもプロンプトの工夫で近い形を作れます(禁止ワードのチェックは4章、選択メニュー化は5章)。
最初に取り組むのは、1か月分のネタの一括生成です。1日1本ずつ考える運用をやめるだけで、担当者の心理的な負荷は大きく下がります。
2-1. コピペ用:30日分の投稿カレンダーを作るプロンプト 以下の指示文をコピーし、【 】内を自社の情報に差し替えて使ってください。
あなたは地域密着型の不動産会社のSNS運用担当です。以下の条件をもとに、Instagram向けの投稿ネタを30日分、一覧表で提案してください。
【自社の条件】
・エリア:〇〇市〇〇区(最寄り駅:〇〇駅)
・主な取扱い:ファミリー向け賃貸、中古マンション売買
・ターゲット:〇〇市への転入を検討する30代の共働き子育て世帯
・発信の目的:来店予約と問い合わせの獲得
【投稿ネタの配分】
・物件紹介:10本
・エリアの暮らし情報:10本
・不動産の知識・お役立ち:7本
・スタッフや会社の様子:3本
【出力形式】日付/カテゴリ/投稿タイトル案/伝えたいこと(1行)の4列の表で出力してください。似た切り口が続かないよう、カテゴリを分散させてください。
地名を具体的に書く:「東京都内」ではなく「〇〇市〇〇区、最寄りは〇〇駅」まで指定すると、実在する施設や生活動線を踏まえたネタが出やすくなります。/出力後に並べ替えを追加で指示する:「この30本を、反響が取れそうな順に並べ替えて」と続けると優先順位が付き、忙しい週は上位だけ投稿する運用に切り替えられます。

2-2. 物件情報に偏らないための「4分類」 ネタの配分をプロンプトで指定する理由は、物件紹介だけが並ぶアカウントがフォローされにくいためです。まだ引っ越しを決めていない層にとって、物件情報の連続は自分ごとになりません。投稿ネタは次の4分類で考えると、役割が重複しなくなります。
| 分類|役割 | ネタの例 |
|---|---|
| 物件紹介|直接の問い合わせを生む | 新着物件、価格改定、内見予約の案内 |
| 暮らし・地域情報|新しいフォロワーを増やす | 駅前の新店舗、学区の様子、公園やスーパーの情報 |
| 知識・お役立ち|専門性への信頼をつくる | 初期費用の内訳、住宅ローン控除の申請時期 |
| 会社・スタッフ|来店のハードルを下げる | 担当者の紹介、店内の様子、地域清掃への参加 |
配分の目安として、物件紹介は全体の3〜4割にとどめるとバランスが取りやすくなります。残りの6割で街の魅力と会社の人柄を伝えると、問い合わせ前の段階でお客さまとの接点が生まれます。
ネタ表ができたら、そこから投稿文へ落とし込みます。媒体ごとに適した文字数もハッシュタグの使い方も異なるため、プロンプトは媒体別に分けるのが基本です。前述のいえらぶGROUPの調査では、不動産会社が運用しているSNSの1位はInstagram(40.6%)でした。まずはInstagramから着手し、慣れてきたら他媒体へ広げる進め方をおすすめします。
3-1. Instagram用:キャプションとハッシュタグ
あなたは不動産会社のSNS運用担当です。以下の物件情報をもとに、Instagramの投稿キャプションを作成してください。
【物件情報】物件名:〇〇マンション/間取り:3LDK/専有面積:72㎡/築年数:8年/最寄駅:〇〇駅 徒歩7分/賃料:13.5万円/特徴:南向き、対面キッチン、宅配ボックス
【ターゲット】〇〇市への転入を検討する30代の共働き子育て世帯
【出力条件】
・冒頭2行で読み手の関心を引く(Instagramは3行目以降が折りたたまれるため)
・本文は300字以内、入居後の生活が想像できるトーンで
・最後にハッシュタグを15個、地域名・間取り・ターゲット層の3方向から選定
・「最高」「日本一」「格安」などの誇大表現は使わない
・断定できない事柄は書かない
冒頭2行に条件を集中させる:Instagramのキャプションは3行目から折りたたまれるため、「駅徒歩7分」「3LDK」など読み手が最初に知りたい条件を先頭に置くよう指示します。/ハッシュタグを3方向に分けさせる:地域名・物件条件・ターゲット層の3方向を指定すると、タグが同じ系統に偏らなくなります。

3-2. X(旧Twitter)用:短文と反応を引き出す一文 Xは文字数の制約が強く、Instagramのキャプションをそのまま流用すると読みにくくなります。同じ物件情報から、媒体に合わせて作り直させましょう。
あなたは不動産会社のSNS運用担当です。以下の物件情報をもとに、X(旧Twitter)向けの投稿文を3パターン作成してください。
【物件情報】(3-1と同じ内容を貼り付け)
【出力条件】
・1パターン120字以内
・1行目で物件の一番の強みを言い切る
・最後に、読み手が返信やブックマークをしたくなる一文を添える
・ハッシュタグは3個まで
・誇大表現と断定できない事柄は使わない
3パターン出させて比較する:強みを「駅距離」「間取り」「設備」のどこに置くかで反応は変わるため、切り口の違う案を並べて選びます。/反応の良かった投稿を学習させる:過去に反応が良かった自社の投稿を3本ほど貼り、「この文体と語尾に寄せてください」と指示するとアカウントらしさが保てます。
3-3. 暮らし・地域情報用:物件を主役にしない投稿文 2-2で触れた暮らし・地域情報の投稿は、物件紹介とは書き方を変える必要があります。物件を売り込まず、街の情報として完結させるのがポイントです。
あなたは〇〇市に20年根ざした不動産会社のスタッフです。以下のテーマで、地域の暮らしが伝わるInstagram投稿文を作成してください。
【テーマ】〇〇駅周辺の子育て環境(公園、小児科、学区)
【出力条件】
・250字以内、地元の人が語るような親しみやすいトーンで
・物件の宣伝は入れず、最後に「お部屋探しのご相談もお気軽に」程度の一文だけ添える
・施設名や営業時間などの具体的な事実は書かず、〇〇の形で空欄にする(後から自社で確認して埋めるため)
AIは施設名や営業時間を誤って生成する場合があるため、空欄(〇〇)で出させて自社で確認しながら埋める運用にすると誤情報を防げます。「この投稿に合う写真の撮影ポイントを3つ」と続けて指示すると、素材集めの指示書としても使えます。物件を主役にしない投稿を挟むことで、アカウント全体の印象が広告色から地域情報へ変わります。
不動産のSNS投稿は、物件情報を含む時点で広告規制の対象になります。宅地建物取引業法第32条は誇大広告などを禁じており、景品表示法と「不動産の表示に関する公正競争規約」も適用されます(参考:不動産公正取引協議会連合会)。AIが生成した文章をそのまま投稿する運用は避けましょう。
4-1. コピペ用:不動産広告の表現チェックプロンプト 投稿の直前に、次の指示文で一次点検をかけます。
あなたは不動産広告の考査担当です。以下のSNS投稿文を、宅地建物取引業法第32条(誇大広告等の禁止)、景品表示法、不動産の表示に関する公正競争規約の観点から点検してください。
【点検してほしい観点】
1. 根拠のない最上級表現(最高、日本一、当社だけ、完璧 など)
2. 客観的な裏付けのない断定(必ず値上がりします、絶対に損しません など)
3. 実際より優良・有利と誤認させる表現
4. 徒歩分数、面積、築年数などの数値の記載漏れや曖昧な表現
5. 取引できない物件を掲載していると受け取られかねない表現
【出力形式】指摘は「該当箇所/懸念される理由/修正案」の3点セットで、表形式にまとめてください。問題がない場合は「指摘なし」と記載してください。
【投稿文】(ここに投稿文を貼り付け)
| 該当箇所|懸念される理由 | 修正案(出力イメージ) |
|---|---|
| このエリアで最高の立地|客観的な根拠のない最上級表現にあたる | 〇〇駅まで徒歩7分の立地 |
| 資産価値は下がりません|将来の価格を断定している | 周辺では〇年以降、取引が継続しているエリアです |
自社の禁止ワード一覧を貼り付ける:社内で使用を禁じている語句のリストをプロンプトに含めると、点検の精度が上がります。東急リバブルのシステムも、不動産広告にふさわしくない表現を禁止ワードとして登録する仕組みを採用しています。/修正案まで出させる:指摘だけでは差し戻しの手間が残るため、「修正案」を必ず出力形式に含めます。このプロンプトを投稿フローに組み込むと、確認の質が担当者の経験に左右されにくくなります。
4-2. AIに任せず人が確認する3項目 AIの点検はあくまで一次チェックです。次の3項目は、必ず人の目で確認してください。
最終的な確認は、宅地建物取引士など有資格者が担うのが安全です。判断に迷う表現は、地区の不動産公正取引協議会へ事前に相談する方法もあります。
ここまでの3工程を、個人のスキルに依存しない形へ落とし込みます。プロンプトが担当者の頭の中にある状態では、異動や退職で運用が止まってしまいます。
5-1. プロンプトを「選択メニュー」に変える 1-2で触れたとおり、東急リバブルはAIへの指示をパターン化した選択メニューに変えることで、属人的な業務を一般的な業務へ転換しようとしています。同じ発想は、表計算ソフト1枚でも再現できます。プロンプトの可変部分を選択肢として並べておくだけです。
| 選択項目 | 選択肢の例 |
|---|---|
| 媒体 | Instagram/X/LINE公式アカウント |
| 投稿カテゴリ | 物件紹介/暮らし情報/知識/会社紹介 |
| ターゲット | 単身の社会人/共働き子育て世帯/住み替えを検討するシニア世帯 |
| トーン | 親しみやすい/落ち着いた/簡潔 |

この表から選んだ語句を穴埋めテンプレへ流し込めば、誰が操作しても同じ品質の指示文ができあがります。新任の担当者にも、選び方だけを引き継げば済みます。
5-2. 更新が止まらない運用サイクルを決める 仕組みを作ったら、実行のタイミングを決めます。作業を月次・週次・都度の3階層に分けると、日々の負担が平準化されます。
ネタ出しは月に1回で済むため、日々の作業は投稿文の調整と確認だけになります。この形にしておくと、繁忙期に更新頻度を落とす判断も、ネタ表の優先順位に沿って冷静に下せます。
A. その傾向はあります。対策として、反応の良かった自社の過去投稿を3本ほどプロンプトに貼り、「この3本の文体と語尾に寄せてください」と指示してください。あわせて、担当者の一人称の感想を1文だけ手書きで足す運用にすると、人の気配が残ります。
A. 台本とテロップ案の作成に使えます。前述のいえらぶGROUPの調査では、エンドユーザーが今後住まい探しに使いたいSNSの1位はYouTube(30.8%)で、不動産会社が運用しているSNSの1位であるInstagramとずれが見られました。動画の企画をAIに任せて着手のハードルを下げる価値はあるといえるでしょう。
A. 本記事のプロンプトは無料で使えるツールでも動作します。ただし、1回に処理できる文字数、画像生成の可否、入力内容が学習に使われるかどうかは、ツールと契約プランによって異なります(※2026年8月時点の情報です)。顧客情報や未公開の物件情報を扱う前に、各ツールの公式サイトで利用規約とデータの取り扱いをご確認ください。
まずは2章のプロンプトを1回だけ試し、来月分のネタ表を作るところから始めてみてください。ネタが手元にある状態を作れれば、SNS運用の負担は目に見えて軽くなります。
AIが作成した投稿文を業務で使用する際は、宅地建物取引業法・景品表示法・不動産の表示に関する公正競争規約に抵触する表現がないか、宅地建物取引士など有資格者による最終確認をお願いいたします。成約済み物件の掲載放置(おとり広告)に注意し、賃料・面積・築年数・徒歩分数は原資料と照合してください。お客さまの個人情報や未公開の物件情報は、学習に使われない設定・仮名化のうえでご利用ください。AIの機能・料金や各SNSの仕様は変更されることが多いため、運用前に公式サイトで最新情報をご確認ください。本記事はAI活用の実務的な解説を目的とし、法的アドバイスを提供するものではありません。
本記事のプロンプトを自社向けに改造するための、型と作り方の基礎。
SNS投稿に添える物件写真の補正。誇大表現を避ける補正の線引き。
空室に家具を足したイメージ画像をSNSに載せる際の注記ルール。
SNS運用を含むAI活用を社内へ定着させる導入の進め方。
4章の広告表現チェックの横断編。宅建業法・景表法・表示規約の注意点12。
SNS運用の「AIで回る仕組み」を自社に落とし込みませんか 株式会社WIG/不動産AI総合研究所は、投稿カレンダー・媒体別投稿文・広告表現チェックのプロンプト整備から、選択メニュー化による属人化解消まで、不動産のSNS運用のAI活用を支援しています。まずは無料のAI成熟度診断、または個別相談からお気軽にどうぞ。
藤田 遼(株式会社WIG 代表/宅地建物取引士)
不動産業界での実務経験をもとに、現場でそのまま使える生成AIの活用法を研究・発信。「今日からコピペで使える」を合言葉に、不動産特化のAIノウハウを届けています。