不動産のAI活用事例は、物件紹介文などの文章作成・顧客対応・提案資料の3領域に分けると自社に取り入れやすくなります。本記事では6社の事例と再現用の指示文に加え、編集部が実際に試した結果までを解説します。事例を読んで終わりにせず、今日から1つ試せる状態を目指しましょう。
「AI活用事例を調べても、出てくるのは大手ばかりで自社に落とし込めない」——そんな声に応える記事です。事例の数を追わず、3領域に整理したうえで、各事例に自社で再現する指示文と、編集部が実際に試した結果を付けました。読んで終わりにせず、今日から1つ試せる状態を目指します。
不動産のAI活用事例は、「物件紹介文などの文章作成」「顧客対応・追客」「提案資料・社内展開」の3領域に分けて見ると、自社で再現しやすくなります。事例を業務の種類で整理すると、自社のどの仕事に置き換えられるかを判断できるためです。
| 領域 | AIに任せられること/代表事例/再現のしやすさ |
|---|---|
| ① 文章作成 | 物件紹介文のたたき台づくり/楽待(ファーストロジック)/◎ 汎用の生成AIで再現できる |
| ② 顧客対応・追客 | 反響への一次返信、追客メールの下書き/プロポクラウド(Housmart)・ITANDI/◎ 汎用の生成AIで再現できる |
| ③ 提案資料・社内展開 | 提案資料の下準備、全社での活用推進/大和ハウス工業・住友林業・三井不動産/△〜○ 考え方を規模を縮めて応用 |
専用の開発をせず、手元の生成AIと指示文だけで同じ効果を狙えるためです。表で「◎」の①②はいずれも本記事の指示文で今日から試せます。③のように開発が前提の事例は、仕組みそのものではなく「どの業務をAIに任せたか」という考え方を参考にしましょう。※2026年8月時点で公表されている情報をもとに作成しています。
不動産業のAI活用事例と導入状況|日本AI導入支援協会/不動産業務に生成AIをどう活用する?|ディジタルグロースアカデミア/不動産業界における生成AIプロンプト活用の実践と未来展望|Mudness Partners
文章作成の領域では、投資用不動産サイト「楽待」の事例が代表的です。紹介文の作成は多くの会社で日常的に発生する業務のため、再現したときの効果も感じやすいでしょう。
事例:ポータルの物件紹介文をAIが自動生成(楽待) 楽待を運営するファーストロジックは、2023年6月にChatGPTを活用した紹介文の自動生成機能を公開しました。同社の発表では、物件ごとに作成していた投資家向けの紹介文をAIが短時間で自動生成するとされています。担当者が一から書いていた文章を「AIのたたき台を人が直す」流れに変えた点が、この事例の本質です。
あなたは不動産会社の担当者です。以下の物件情報をもとに、ポータルサイト掲載用の紹介文を300文字程度で作成してください。
・物件名:〔例:〇〇マンション 305号室〕
・間取り・面積:〔例:2LDK・55㎡〕
・交通:〔例:〇〇線〇〇駅 徒歩7分〕
・特徴:〔例:南向き・2024年リフォーム済み〕
・想定するお客さま:〔例:共働きのご夫婦〕
・注意点:「絶対」「完璧」「格安」などの誇張表現は使わない
「想定するお客さま」の行を具体的に書くこと。同じ物件でも、単身者向けとファミリー向けでは響く言葉が変わるため、仕上がりの精度が上がります。指示文の作り方は「はじめての不動産AIプロンプト」で詳しく解説しています。
編集部で試してみた:中古マンションの紹介文づくり 築18年・2LDK・駅徒歩7分・リフォーム済みという架空の中古マンションで試しました。1回目は設備の説明が並ぶだけの平板な文章に。原因は想定するお客さまを「ファミリー」とだけ書いていたことでした。「共働きで小学生のお子さまがいるご家庭」と具体化したところ、通勤のしやすさと収納の広さを軸にした文章へ変わりました。

誇張表現の注意書きを入れると「絶対」「格安」は現れませんでしたが、「人気の高いエリア」という根拠を示しにくい表現は混ざりました。これは「〇〇駅まで徒歩7分」という事実の記載に置き換えています。AIの下書きをそのまま掲載せず、人が最終確認する運用は欠かせません。
顧客対応・追客の領域では、イタンジグループ(Housmart・ITANDI)の事例が参考になります。反響対応や追客はスピードが成果を左右する業務のため、AIとの相性が良い領域です。
事例:追客メール・反響対応をAIが自動化(イタンジグループ:Housmart・ITANDI) イタンジグループのHousmartが提供する追客支援サービス「プロポクラウド」は、2025年5月にAIによる文章生成機能を追加し、提案したい物件を選ぶだけでメール文章を自動生成できるとされています。同じイタンジグループのITANDIが提供する「ITANDI賃貸仲介」でも、反響への一次対応や追客メールを自動化する機能が提供されています。共通するのは、返信の早さと抜け漏れ防止をAIで支えている点です。
あなたは不動産仲介会社の営業担当です。ポータルサイトから届いた問い合わせに対する一次返信メールを作成してください。条件は以下のとおりです。
・問い合わせ内容への回答を最初に書く
・内見の候補日を2つ提案する
・250文字程度で、丁寧かつ押し付けがましくない文面にする
・誇張表現や断定表現は使わない
問い合わせ内容:(ここに問い合わせ文を貼り付け)
編集部で試してみた:ポータル経由の問い合わせへの一次返信 「〇〇マンションの空室状況を知りたい。今週末に内見できるか」という架空の問い合わせで試しました。文面は質問への回答・内見候補日・結びの順に整い、構成はそのまま使える水準。ただし空室状況について「ご案内可能です」と、実際の空室情報を知らないまま断定していました。
指示文に「事実を確認できない項目は、確認のうえ折り返す旨の文にしてください」の1行を足すと、空室状況の部分が確認を約束する表現へ変わり、そのまま送っても問題のない文面になりました。反響対応の自動化は査定反響の追客メールをGmail下書きへ自動作成もあわせてどうぞ。
提案資料・社内展開の領域では、大手3社の事例が公表されています。規模は大きいものの、「どの業務をAIに任せたか」という視点で見ると、中小の会社にも応用できる要素があります。
大和ハウス工業は2025年9月に「AIプランコンシェルジュ」を発表し(全国での活用開始は10月)、要望と敷地条件から住宅プランを数秒で提案します。2,000件以上のプランをもとに説明文まで自動生成するとされます。住友林業も2025年4月に「AI間取り検索」の実証(PoC)モデルを公表。提案の下準備をAIに任せ、人はお客さまとの対話に集中する役割分担が共通点です。
三井不動産は2025年10月、ChatGPTの法人版を全社員に導入したとされています。約150名の推進リーダーを中心に、物件情報の要約や資料の下書きなど部門ごとの活用を短期間で拡大。中小の会社でも「推進役を決めて活用例を共有する」という進め方はそのまま応用できます。
あなたは不動産会社の営業担当です。お客さまへの提案資料のたたき台として、物件のおすすめポイントと懸念点を整理してください。
・物件情報:〔例:築15年・2LDK・駅徒歩10分・5,480万円〕
・お客さまの希望:〔例:予算5,500万円以内・通勤30分圏内・収納重視〕
・出力:おすすめポイント3つ、懸念点2つ、それぞれ理由つき
懸念点まで出させること。良い点だけの資料よりも、懸念と対応まで示した提案の方が、お客さまの信頼につながりやすいと考えられます。
編集部で試してみた:提案資料のたたき台づくり 築15年・2LDK・駅徒歩10分の架空物件で試したところ、おすすめポイント3つは希望条件と結び付いた内容で骨組みとして使える出来でした。一方、懸念点は「築年数が経過」「駅からやや距離」という一般的な指摘にとどまりました。

「懸念点には、お客さまへの伝え方の案も添えてください」の1行を足すと、修繕履歴や管理状況を確認したうえで説明する、といった対応案まで出力されました。ただし修繕履歴などの事実は資料で裏を取る前提です。この確認を省くと、お客さまへ誤った説明をする可能性があります。
6つの事例には、規模を問わず参考になる共通点があります。ツールの種類よりも、進め方に共通項がある点が重要です。
成功している会社は、最初から全業務に広げず、特定の業務で成果を出してから展開しています。楽待の紹介文も三井不動産の全社導入も、対象業務を明確にした点は同じ。自社でも、まず1業務で試し、うまくいった指示文を社内で共有する流れがおすすめです。
どの事例もAIの出力をそのまま使わず、人の確認を前提にしています。編集部の検証でも「人気エリア」という根拠の薄い表現や空室状況の断定など、確認が必要な出力が現れました。不動産の広告や提案には宅地建物取引業法などのルールがあるため、「AIが下書き、人が仕上げ」の役割分担を崩さないことが安心して使い続ける条件です。

A. 開発しなくても、文章業務であれば汎用の生成AIと指示文で近い効果を狙えます。開発が必要になるのは、自社データとの連携や査定のような専門処理が中心です。まずは本記事の指示文で試し、足りない部分が明確になってから開発やツール導入を検討する順番がおすすめです。
A. 活用できます。入居者への案内文の作成、オーナーさま向け報告書の下書き、点検記録の要約などは、本記事の指示文と同じ考え方で再現可能です。管理業務は定型的な文書が多いため、テンプレ化との相性が良い領域です。
A. 効果は業務内容や使い方によって変わるため、同じ数値になるとは限りません。まず1つの業務で、AI利用前と後の作業時間をメモして比べるのがおすすめです。自社の記録があれば、社内への説明や投資判断の根拠として使えます。
不動産のAI活用事例は、物件紹介文などの文章作成・顧客対応・提案資料の3領域に分けると、自社に取り入れやすくなります。楽待やイタンジグループの事例が示すとおり、文章作成と顧客対応の領域は、汎用の生成AIと指示文で中小の会社でも再現可能です。編集部の検証でも、指示文に1行足すだけで実務に使える水準へ近づくと分かりました。まずは本記事の穴埋めテンプレを1つ選び、今日の業務で試すところから始めてみてください。
本記事で紹介した各社の事例は、公表情報をもとに2026年8月時点で作成しています。サービス内容は変更される場合があるため、詳細は各社公式サイトでご確認ください。AIが作成した文章を業務で使う際は、宅地建物取引業法や景品表示法に抵触する表現がないか、宅地建物取引士など有資格者による最終確認をお願いします。物件広告の表現は全国不動産公正取引協議会連合会の公正競争規約もあわせてご確認ください。お客さまの個人情報は仮名化のうえご利用ください。本記事はAI活用の実務的な解説を目的とし、法的アドバイスを提供するものではありません。
本記事「顧客対応」領域の実践編。反響への追客メールをClaudeで自動化。
事例を自社で再現する「指示文(プロンプト)の型」をテンプレ付きで解説。
事例を自社に広げるための導入・社内定着の進め方。
自社業務へのAI活用をご検討の方へ 不動産業務へのAI活用の設計・導入・社内定着までを支援しています。まずは無料のAI成熟度診断、または個別相談からお気軽にどうぞ。
藤田 遼(株式会社WIG 代表/宅地建物取引士)
不動産業界での実務経験をもとに、現場でそのまま使える生成AIの活用法を研究・発信。「今日からコピペで使える」を合言葉に、不動産特化のAIノウハウを届けています。