重要事項説明書がAIで作れない理由と使える工程・プロンプト

重要事項説明書そのものは、AIで作ることができません。調査・判断・説明のいずれもが宅地建物取引士の責任にひもづいており、AIには移せないためです。この記事では作れない理由を3つに整理したうえで、代わりにAIを使える3つのシーンとコピペ用プロンプトを解説します。重説にかかる確認の手間を、今日から減らせるようになります。

重説作成は調査・転記・点検と工程が多く、残業の原因になりやすい業務です。AIで効率化したい——でも「法律で決まっている書類をAIに任せて大丈夫なのか」という不安で着手できていない方は多いはずです。結論から言います。重要事項説明書そのものは、AIで作れません。 ただし、その前後の工程ではAIが大きく役立ちます。この記事は「作れない」と言い切ったうえで、使える工程を具体的なプロンプトつきでお渡しします。

この記事で分かること

・重要事項説明書そのものをAIで作れない、宅建業法上の3つの理由
・代わりにAIを使える3シーン(書く前の「準備」/書いた後の「点検」/当日の「説明準備」)
・各シーンでそのまま使えるコピペ用プロンプトと、汎用AI・特化ツールの使い分け

1. 重要事項説明書がAIで作れない3つの理由

重要事項説明書そのものをAIに作らせることはできません。時間短縮をうたうサービスも登場していますが、それらが担うのはドラフト作成の補助であり、書類を完成させる責任までは引き受けていないためです。理由を3つに分けて確認しておきましょう。

なぜ重要事項説明書はAIで作れないのかを示す図。調査・判断・説明は宅地建物取引士の責任であり、AIには移せない。理由①調査した事実の正しさをAIは保証できない、理由②記載するかどうかの判断に法的責任がともなう、理由③説明と記名は宅地建物取引士だけができる。AIは判断ではなく、周辺工程のサポートに活用するのが正解。
重説そのものは作れない。AIは判断ではなく、周辺工程のサポートに使う

1-1. 理由1:調査した事実の正しさをAIは保証できない 重説に書く内容の大半は、現地や役所で確認した事実です。登記された権利の種類と内容、法令にもとづく制限、水害ハザードマップ上の所在地、私道に関する負担など、宅地建物取引業法第35条が定める事項は、いずれも調査によって確かめるものです。AIは手元に渡された資料の範囲でしか答えられず、役所へ照会していない事項をもっともらしく埋めることもあります。事実確認の工程そのものは、AIに置き換えられません。

1-2. 理由2:記載するかどうかの判断に法的責任がともなう 調査で分かった事実を、重要事項として記載するかどうかの判断も人が担います。記載事項は宅地か建物か、売買か貸借かによって変わり、物件固有の事情も加わります。判断を誤れば、後の紛争や行政処分につながります。AIの出力はあくまで判断材料であり、「記載すべきかどうか」の結論をAIに委ねる使い方は避けてください。

1-3. 理由3:説明と記名は宅地建物取引士だけができる 重要事項の説明は、契約が成立するまでの間に、宅地建物取引士が宅地建物取引士証を提示して行う法定の手続きです。書面には宅地建物取引士の記名が必要であり、宅建士以外の従業者が説明を行うことはできません。この部分は制度上、AIに移せない領域です。

押印廃止・電磁的方法について(2026年8月時点)

2022年5月18日施行の改正により、35条書面への押印は不要となり記名で足りるようになりました。相手方の承諾があれば電磁的方法による提供も認められています(参考:全日本不動産協会)。国土交通省の実施マニュアルは令和6年12月版に更新されています(全宅連の告知)。書面の電子化やIT重説を進める場合は、最新版をご確認ください。

では、AIはどこで使えるのか

作れないのは重説そのものであり、その前後の作業は別です。次の3シーンなら、宅建士の判断を支える下働きとしてAIを活用できます。①書く前の「準備」(調査項目の洗い出しと転記候補の整理)/②書いた後の「点検」(記載漏れと資料との食い違いの洗い出し)/③当日に向けた「説明準備」(専門用語の言い換えと想定質問への回答づくり)。2章以降でコピペ用プロンプトを紹介します。

2. 使えるシーン①:書く前の「準備」

最初のシーンは、重説を書き始める前の準備です。調査漏れは後工程の手戻りに直結するため、ここを整えると全体の時間が最も縮みます。

重説×AIで使えるシーン①:書く前の「準備」の図。2-1 調査項目リストの作成=権利関係(登記簿の確認・抵当権の有無・私道負担の有無)、法令上の制限(用途地域・建ぺい率容積率・ハザードマップ)、マンション固有の事項(管理規約・修繕積立金)などをカテゴリ別に洗い出し、要注意項目を明示。2-2 資料から転記候補を整理=「重説の記載項目/転記候補の内容/根拠資料・該当箇所」を表にする(例:土地面積102.34㎡=登記事項証明書P.2、築年月2003年4月=登記事項証明書P.1、管理費 月額10,500円=管理規約P.15、駐車場の有無=資料に記載なし(要調査))。
シーン①:調査項目の洗い出しと、資料からの転記候補の整理

2-1. 物件タイプ別の調査項目リストを作らせる 確認すべき項目は、物件の種別や条件によって変わります。区分所有建物なら管理規約や修繕積立金、既存住宅なら建物状況調査の実施状況などが加わります。「今回の物件で必要な確認項目は何か」の洗い出しから、AIに任せてみましょう。

あなたは不動産売買仲介の実務経験が長い宅地建物取引士です。以下の物件について、重要事項説明書を作成する前に確認すべき調査項目を一覧にしてください。

【物件情報】
種別:中古マンション(区分所有建物)/所在地:〇〇市〇〇町/築年数:22年/取引形態:売買(媒介)/特記事項:管理組合あり、ハザードマップ上の浸水想定区域内

【出力形式】
1. カテゴリ別(物件の表示と権利関係/法令上の制限/マンション固有の事項/お金と取引条件/その他)に整理する
2. 各項目に「確認先」と「確認に使う書類名」を併記した表にする
3. 見落としが起きやすい項目には「要注意」と記載する

※法令の解釈が必要な項目は断定せず、「要確認」と明記してください。

もう一歩良くなるコツ(2-1)

特記事項ほど具体的に書く(「浸水想定区域内」「私道負担あり」「借地権」などイレギュラーな条件を先に伝えると関連項目まで拾える)/自社の書式を貼り付ける(使っている重説フォーマットの項目名をそのまま渡すと、社内の並び順に沿った出力になる)。出力リストは調査時のチェックシートとして印刷して使えます。

2-2. 集めた資料から転記候補を整理させる 重説の作成では、登記事項証明書や管理規約、重要事項調査報告書など複数の資料を突き合わせます。AIに資料を読み取らせ、「どの項目にどの資料の記載を転記するか」を先に整理させると、書き始めの負担が軽くなります。

添付した資料をもとに、重要事項説明書へ転記する候補を整理してください。

【資料】
(登記事項証明書、管理規約、重要事項調査報告書などを添付、または本文に貼り付け)

【出力形式】
「重説の記載項目/転記候補の内容/根拠となる資料名と該当箇所」の3列の表

【条件】
・資料に記載がない項目は「資料に記載なし(要調査)」と書く
・複数の資料で記載が食い違う場合は、両方を併記して「要確認」と書く
・推測で内容を補わない

もう一歩良くなるコツ(2-2)

根拠の記載場所を必ず出力させる(どの資料の何ページかが分かると、宅建士の確認が数分で終わる)/個人情報は事前に置き換える(売主・買主の氏名や連絡先は「売主A」「買主B」に置き換えてから読み込ませる)。ここで作った表は、次の点検シーンでもそのまま使い回せます。

3. 使えるシーン②:書いた後の「点検」

2つ目のシーンは、書き上げた重説の点検です。人の目は同じ書類を何度も見ると慣れてしまい、抜けを見落としやすくなります。機械的な突き合わせをAIに任せ、宅建士は判断が必要な部分に集中しましょう。

重説×AIで使えるシーン②:書いた後の「点検」の図。3-1 記載漏れの点検リスト(例:賃貸)=敷金・礼金・更新料の有無/契約期間・更新条件/解約予告期間/違約金の有無/設備の整備状況など、抜けやすい項目をチェックリストで確実に確認。3-2 資料との食い違いを洗い出し=「指摘箇所/重説の記載/資料の記載/指摘の種類」を表にする(例:土地面積 102.20㎡↔102.34㎡=不一致、築年月 2003年5月↔2003年4月=不一致、建物構造 RC造↔RC造=表記ゆれ、管理費 一致、駐車場 記載なし↔あり月額8,000円=記載なし)。AIに機械的な突き合わせを任せ、宅建士は判断が必要な部分に集中。
シーン②:記載漏れの点検と、資料との食い違いの洗い出し

3-1. 記載漏れの点検チェックリストを作らせる 賃貸と売買では、記載すべき事項が異なります。取引ごとに専用の点検チェックリストを作っておくと、担当者による確認品質のばらつきを抑えられます。

あなたは不動産取引の書類レビューを担当する宅地建物取引士です。以下の賃貸物件について、重要事項説明書をレビューする際の確認チェックリストを作成してください。

【物件情報】
種別:賃貸マンション/構造:RC/築年数:15年/特記事項:ペット飼育可、2024年に外壁修繕済み

【チェックリストの要件】
・宅地建物取引業法第35条が定める記載事項を網羅する
・特記事項に関連する確認項目を追加する
・各項目に「確認する書類名」と「確認のポイント」を併記する
・記載漏れが起きやすい項目には「要注意」と記載する

※仮定した点は必ず「仮定」と明記してください。

もう一歩良くなるコツ(3-1)

賃貸と売買でリストを分けて保存する(記載事項が異なるため、使い回すと漏れの原因になる)/過去に指摘を受けた項目を追記する(社内の指摘履歴を数行足すだけで、自社仕様のリストに育つ)。一度作ったリストは、社内の共通資産として保存しておきましょう。

3-2. 資料と記載内容の食い違いを洗い出させる 点検リストができたら、次はドラフトと根拠資料の突き合わせです。面積や築年月、金額といった数値の転記ミスは、AIが得意とする領域です。

以下の重要事項説明書の記載内容と、添付した資料の内容を突き合わせ、食い違いや記載漏れを指摘してください。

【重要事項説明書(案)】
(ドラフトを貼り付け)

【根拠資料】
(登記事項証明書、管理規約などを添付)

【出力形式】
「指摘箇所/重説の記載/資料の記載/指摘の種類(不一致・記載なし・表記ゆれ)」の4列の表

【条件】
・面積、築年月、金額、持分などの数値を重点的に確認する
・判断が必要な項目は結論を出さず「宅建士の確認が必要」と書く
・指摘がない場合は「指摘なし」と書き、無理に指摘を作らない

もう一歩良くなるコツ(3-2)

「指摘を作らない」と明示する(この一文がないと、AIは無理に問題点を探して報告することがある)/指摘は必ず原本で裏取りする(AIの指摘自体が誤っている場合もあるため、最終判断は資料の原本で行う)。点検はAIに任せても、直すかどうかを決めるのは担当者の役割です。

4. 使えるシーン③:当日に向けた「説明準備」

3つ目のシーンは、説明当日の準備です。重説は読み上げて終わりにすると内容が伝わりません。特に初めて不動産を取得するお客さまにとっては、専門用語の壁が高くなります。

重説×AIで使えるシーン③:当日に向けた「説明準備」の図。4-1 専門用語の言い換え=例「私道負担」を「この道路は一部が私有地のため、所有者の方と共有して使う必要があります。将来の建て替えや工事の際には、所有者の承諾が必要になることがあります」とお客さま向けに言い換える。4-2 想定質問と回答の下書き=Q管理費と修繕積立金の違いは?→A管理費は日常の管理に使うお金、修繕積立金は将来の大規模修繕に備えるお金です(重説の第〇項に記載)。Qハザードマップの浸水想定は?→A〇〇市のハザードマップでは0.5〜3mの浸水が想定されています(重説の第〇項に記載)。
シーン③:専門用語の言い換えと、想定質問への回答づくり

4-1. 専門用語をお客さま向けの言葉に言い換える 「私道負担」「建ぺい率」「重要事項に係る調査報告書」といった用語は、業界の外では通じにくい言葉です。言い換えの下書きをAIに作らせ、宅建士が正確さを確認する流れが向いています。

あなたは不動産仲介の営業担当です。以下の重要事項説明書の項目について、初めて住宅を購入するお客さま向けの補足説明を作成してください。

【対象の項目】
(言い換えたい項目名と、重説の記載内容を貼り付け)

【条件】
・1項目あたり3行以内でまとめる
・専門用語を使う場合は、直後にかっこ書きで補足する
・お客さまにとっての影響(何に気をつければ良いか)を1行入れる
・重説の記載内容そのものは書き換えず、あくまで補足として書く

もう一歩良くなるコツ(4-1)

お客さまの属性を伝える(「初めての住宅購入」「投資目的」など前提を書くと補足の重点が変わる)/言い換え文は重説に書き込まない(説明用のメモとして手元に置き、書面の記載は原文のまま保つ)。補足の言い回しがそろうと、担当者ごとの説明のばらつきも小さくなります。

4-2. 想定質問と回答の下書きを作る 説明の途中で質問を受け、その場で調べ直すことは少なくありません。あらかじめ想定質問を洗い出しておけば、当日の中断を減らせます。IT重説のようにオンラインで行う場合は、間が空きにくくなる効果も期待できます。

以下の重要事項説明書の内容について、お客さまから受けそうな質問を10個挙げ、それぞれに回答の下書きを作成してください。

【重要事項説明書(案)】
(ドラフトを貼り付け。個人が特定できる情報は仮名に置き換える)

【条件】
・質問は、初めて不動産を取得するお客さまの目線で作る
・回答は3行以内でまとめる
・書面に記載がない事項を回答に含めない
・その場で断定できない質問には「持ち帰って確認する」と書く

もう一歩良くなるコツ(4-2)

回答の根拠を書かせる(「重説の第〇項に記載」と付けさせると、当日その場で参照できる)/答えにくい質問だけ抜き出す(心理的な負担が大きい質問を事前に把握できると、準備の優先順位を決めやすい)。準備した想定問答は、新人の同行時の教材としても活用できます。

5. 汎用AIと重説特化ツールのどちらを選ぶか

重説のAI活用には、ChatGPTやClaudeなどの汎用AIを使う方法と、重説作成に特化したツールを導入する方法があります。どちらが正解というものではなく、取引件数と社内体制で選び分けるのが現実的です。

5-1. まずは汎用AIから始める 2章から4章で紹介したプロンプトは、すべて汎用AIで実行できます。導入の稟議も設定作業も不要なため、今日から試せる点が最大の利点です。取引件数が月に数件程度であれば、汎用AIだけでも十分に効果を感じられるでしょう。一方で、汎用AIには次のような限界もあります。

つまり汎用AIは、書類を作る仕組みではなく、担当者を助ける相談相手として位置づけると失敗しません。

5-2. 特化ツールを検討する判断基準 重説特化のSaaSは、資料を読み込ませてドラフトを生成し、根拠箇所をハイライト表示する機能などを備えています。料金や機能はサービスごとに異なるため、導入前に公式サイトで最新の内容を確認してください(※2026年8月時点)。検討の目安になるのは、次の3点です。

制度側の動きも定期的に確認を

3つのうち2つ以上が当てはまるなら、ツールの比較検討に進む価値があります。当てはまらない場合は、まず汎用AIで工程を整理するほうが費用対効果は高いでしょう。なお国土交通省は、媒介契約書・重要事項説明書・売買契約書などを対象に、AIによる作成補助サービスの効果を検証する実証事業を進めています。制度側の整理が動いている段階のため、社内ルールも定期的に見直すことをおすすめします。

6. よくある質問(Q&A)

Q. 無料で使えるAIでも重説業務に活用できますか?

A. 文章の点検や言い換えといった用途であれば、無料の範囲でも試せます。ただし入力した内容の取り扱いは、サービスやプランによって異なります。業務で使う前に、入力データが学習に使われない設定になっているかを確認してください。法人向けプランの利用もあわせて検討すると安心です。

Q. IT重説の最中にAIを使っても良いですか?

A. 説明の最中にAIを操作することは避けてください。重要事項説明は宅地建物取引士が自身の責任で行う手続きであり、その場でAIの回答を読み上げる行為は趣旨に反します。AIの利用は事前準備までにとどめ、当日は準備した資料で対応しましょう。

Q. 社内でAI活用を始めるとき、最初に決めておくことは何ですか?

A. 「使って良い工程」と「使ってはいけない工程」を書き出し、1枚のルールにまとめることをおすすめします。あわせて、入力前に個人情報を仮名化する手順と、AIの出力を誰が確認するかの担当も決めておくと運用が安定します。まずは1つの工程から始め、問題が起きないことを確認してから範囲を広げましょう。

7. まとめ

重説は、不動産取引のなかでも責任の重い書類です。だからこそ、AIには判断ではなく確認の手間を肩代わりさせる使い方が向いています。まずは次の1件の調査項目リストを作らせるところから、試してみてください。

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この記事を書いた人

藤田 遼(株式会社WIG 代表/宅地建物取引士)
不動産業界での実務経験をもとに、現場でそのまま使える生成AIの活用法を研究・発信。「今日からコピペで使える」を合言葉に、不動産特化のAIノウハウを届けています。