不動産のChatGPT活用方法|初心者向け5業務と指示文

不動産業務でのChatGPT活用は、優先度の高い5業務から始めると迷いません。物件紹介文、追客メール、希望条件の整理、資料の確認事項の抽出、オーナー報告の5つです。この記事では、初めて使う担当者に向けて、業務別のコピペ用指示文と最初にしておく設定、出力の確認方法を解説します。順に試すうちに使い方が身につきます。

検索すると「活用方法13選」のような一覧が並ぶが、どれが自分の画面で今すぐできて、どれが開発を伴うのか分からない。顧客情報を入力して良いのか、広告文をそのまま使って良いのかも判断できない——。この記事は、ChatGPTに一度は触れたものの業務に定着していないAI初心者の担当者に向けて、数を追わず、最初に試す5業務に絞り、コピペ用の指示文と最初の設定・出力の確認までをまとめます。

この記事で分かること

・不動産の初心者が最初に試す5業務と、その選び方(3つの条件)
・5業務それぞれのコピペ用指示文(表示規約18条2項の条件つき)
・入力データの扱いと、最初にしておく設定(学習オフ・カスタム指示)
・出力を実務に出す前の確認6項目と、AIに任せない業務の線引き

1. 不動産のChatGPT活用方法|初心者が最初に試す5業務

ChatGPTの活用方法を調べると、10選や13選といった一覧が並びます。初めて使う段階では数を追わず、効果を確かめやすい業務から順に試すほうが身につきます。

不動産のChatGPT活用方法・初心者が最初に試す5業務の図。①物件紹介文・広告文の下書き(物件の特徴を伝わりやすい文章に整える)②反響後の追客メールの作成(問い合わせ後のフォロー文を作る)③お客さまの希望条件の整理(ヒアリング内容を表にまとめる)④物件資料・契約書から確認事項を抜き出す作業(チェックリストや確認事項を整理する)⑤オーナー報告と入居者向けのお知らせの作成(定型のお知らせ文を作る)。5業務を選んだ3つの条件=1毎日または毎週発生する、2渡す資料が手元にそろっている、3確認に時間がかからない。査定価格の決定や契約条件の判断は初めの段階では外す。
最初に試す5業務と、選んだ3条件(事実は人が渡し、AIには表現と整理を任せる)

1-1. 結論|不動産のChatGPT活用は5業務から始めると迷わない 不動産会社の担当者が最初に試す業務は、次の5つに絞れます。いずれも手元の情報を渡して、文章や表に整えさせる作業です。

  1. 物件紹介文・広告文の下書き
  2. 反響後の追客メールの作成
  3. お客さまの希望条件の整理
  4. 物件資料・契約書から確認事項を抜き出す作業
  5. オーナー報告と入居者向けのお知らせの作成

5業務に共通するのは、事実の出どころを人が渡し、AIには表現と整理を任せる点です。価格や面積、法令の判断をAIに補わせなければ、出力の確認も短い時間で済みます。着手する順番は、上から1つずつで構いません。1の物件紹介文は出来ばえをその場で判断でき、指示の条件を足すと文章がどう変わるかも分かります。AIの使い方を覚える教材としても向いています。

1-2. 5業務を選んだ基準|初心者が失敗しにくい条件 5業務は、次の3つの条件を満たすものから選びました。慣れるまでは、効果の大きさより「外しにくさ」を優先するほうが続きます。

  1. 毎日または毎週発生する:試す回数が多く、上達が早い
  2. 渡す資料が手元にそろっている:物件資料やメモがあれば、AIが事実を作る余地が減る
  3. 確認に時間がかからない:出力が数百字で、元の資料と突き合わせれば済む

反対に、1回の判断が大きい業務や、お客さまが直接AIとやり取りする業務は、初めの段階では外します。査定価格の決定や契約条件の判断がこれにあたり、誤りが出たときの影響も読みにくいためです。自社の業務に当てはめるときも、この3条件で選べば大きく外れません。売買仲介なら物件紹介文を「販売図面のコメント」に、管理会社ならオーナー報告を「月次レポート」に置き換えて試してみましょう。

1-3. 不動産のChatGPT活用で後回しにして良い業務 他の記事で活用方法として並ぶもののうち、次の業務は後回しにできます。5業務に慣れてから戻ると、必要な準備も判断しやすくなります。

業務|後回しにする理由戻ってくる目安
市場調査・エリア情報の整理|出典を1件ずつ開いて確かめる手間が大きい公的統計を自分で渡せるようになってから
ローン返済・利回りの試算|計算を任せると検算の手間が増える数値ではなく表計算の数式を作らせる使い方に慣れてから
ブログ・SNS投稿の原稿|物件を載せる投稿は広告として確認が要る2-1の確認が習慣になってから
問い合わせの自動応答|自社サイトやLINEへの組み込みが前提5章の条件がそろってから
希望に合う物件の自動提案|自社の物件データとの連携が前提5章の条件がそろってから

下の2つは、ChatGPTの画面では実現しません。自動応答や自動提案を活用方法として紹介する記事もありますが、開発か専用サービスの契約が必要です。判断の材料は5章にまとめました。なお、契約書・重要事項説明書の作成と査定価格の決定は、後回しではなくAIに任せない業務です。理由は4-2で解説します。

2. 不動産業務のChatGPT活用方法5選|コピペ用の指示文付き

使い方は、ChatGPTの入力欄に指示文を貼り付け、【 】の部分を自社の情報に差し替えて送れば試せます。指示文はすべて「役割→渡す情報→条件→出力形式」の順にそろえているため、慣れてくると自分の業務に合わせて条件を足せます。顧客名は「A様」のような仮名に置き換えてから貼り付けましょう。

2-1. 物件紹介文・広告文を表示規約の条件付きで作る 物件紹介文は、ChatGPTの活用で効果が見えやすい業務の1つです。一方で、条件を付けずに頼むと「最高の立地」「格安」のような表現が混ざる可能性があります。これらは不動産の表示に関する公正競争規約(表示規約)で使用が制限された特定用語にあたるため、指示文の段階で外しておきます。

物件紹介文・広告文を表示規約の条件付きで作る図。コピペ用の指示文(賃貸マンション・最寄り駅と徒歩分数・間取り専有面積・築年月・設備・周辺環境・想定入居者を渡す)と、特定用語の例(使用NG=最高・格安・完全・絶対・日本一・掘出し物・厳選・完売など)を並べる。出力イメージはキャッチコピー案2つと【要確認】の一覧(周辺環境・想定入居者・設備の詳細)。もう一歩良くなるコツ=周辺環境は現地で確認したものに絞る/2案を並べて比べる/特定用語の条件はカスタム指示に登録する。
物件紹介文は表示規約の特定用語を条件で外し、【要確認】を残して作る
あなたは賃貸仲介会社の広告担当者です。以下の物件情報をもとに、ポータルサイトに掲載する物件紹介文を作成してください。

【物件情報】
・物件種別:【賃貸マンション】
・最寄り駅と徒歩分数:【〇〇駅 徒歩〇分】
・間取り・専有面積:【1LDK・〇〇平方メートル】
・築年月:【〇〇年〇月】
・設備:【オートロック、宅配ボックス、浴室乾燥機】
・周辺環境(現地で確認済みのもの):【】
・想定する入居者:【単身の社会人】

【条件】
・キャッチコピー(30字以内)と本文(200字以内)を2案ずつ作る
・物件情報に書かれていない設備、周辺施設、距離を補わない
・徒歩分数と面積は計算し直さず、物件情報の表記のまま使う
・「完全」「絶対」「日本一」「最高」「格安」「掘出し物」「厳選」「完売」など、欠けるところがない・他より優れる・著しく安いといった印象を与える語を使わない
・「必ず」「確実に」など、住み心地や資産価値を保証する表現を使わない
・判断がつかない箇所は【要確認】と書く

【出力形式】キャッチコピー案(2案)→本文案(2案)→【要確認】の一覧

条件を付けない場合、「駅近で最高の立地!格安の1LDK」のような見出しが返る可能性があります。条件を付けると、「〇〇駅徒歩〇分、南向きバルコニー付きの1LDK」のように、資料にある事実で魅力を伝える文章に変わります。条件の根拠は2つあります。表示規約18条2項は、「最高」「格安」などの用語を、裏付けとなる合理的な根拠資料がない限り使ってはならないと定めています。徒歩分数は、同規約の施行規則で、道路距離80メートルにつき1分とし、1分未満の端数を切り上げて算出するルールです。AIが地図から計算し直すと、資料と違う分数が載る可能性があります。

もう一歩良くなるコツ

周辺環境は現地で確認したものに絞る:閉店した店舗や、距離の誤りを載せる事故を防げます。/2案を並べて比べる:表現の幅が見え、社内の確認も選ぶ作業で済みます。/特定用語の条件はカスタム指示に登録する:毎回の貼り付けが不要になります(3-2)。宅建業法32条も、物件の所在や環境などについて著しく事実と異なる広告を禁じています。AIの文章も自社の広告として扱い、掲載前に物件資料と照らし合わせましょう(参考:特定用語の使用基準|公益社団法人首都圏不動産公正取引協議会/不動産の表示に関する公正競争規約施行規則|公益社団法人首都圏不動産公正取引協議会)。

2-2. 反響後の追客メールを段階別に作る 追客メールは、反響当日・3日後・1週間後の3通をまとめて作らせる使い方がおすすめです。1通ずつ頼むより、送る順番と内容の重なりを一度で確認できます。

あなたは賃貸仲介の営業担当者です。以下の反響内容をもとに、お客さまへの追客メールを3通作成してください。

【反響内容】お客さま:【A様】/問い合わせ物件:【〇〇マンション 1LDK】/問い合わせ内容:【】

【条件】
・1通目は反響当日、2通目は3日後、3通目は1週間後に送る前提で書く
・3通で同じ内容を繰り返さず、2通目以降は類似物件の案内や内見日程の提案に切り替える
・各通200字以内、件名を付ける
・反響内容と物件情報に書かれていない条件は書かず、【要確認】とする

3通目まで返信がない場合の対応や、反響の種類ごとの書き分けは、「反響メール対応をAIで効率化する指示文」で詳しく扱っています。

2-3. お客さまの希望条件を整理する ヒアリングのメモは、「必須」「希望」「妥協できる」の3段に分けさせると、物件検索の条件にそのまま使えます。来店や電話で聞いた話は順番がばらばらになりやすく、条件同士の矛盾にも気づきにくいためです。

以下はお客さまとの面談メモです。住まい探しの条件を「必須条件」「希望条件」「妥協できる条件」の3つに分けて表にしてください。

【面談メモ】(ここにメモを貼り付け)

【条件】
・メモに書かれていない条件は追加しない
・予算と広さ、駅距離と賃料のように両立しにくい条件があれば、表の下に「確認したい質問」として3つまで挙げる
・表は「区分/条件/メモの該当箇所」の3列にする

もう一歩良くなるコツ

メモから氏名と勤務先を外す:年収は「予算の上限〇万円」に置き換えて渡します。/質問はそのまま次の連絡に使う:矛盾を確認する問いかけは、提案の精度を上げる材料になります。整理した表は、物件の比較表を作るときの列の見出しにもなります。

2-4. 物件資料・契約書から確認事項を抜き出す 資料の読み取りは、判断ではなく「確認が必要な箇所の一覧」を作らせる使い方にとどめます。長い契約書や管理規約から該当箇所を探す時間を減らし、内容の判断は宅地建物取引士が行う分担です。

添付した賃貸借契約書(案)を読み、お客さまへの説明前に担当者が確認すべき箇所を一覧にしてください。

【抜き出す項目】
1. 契約期間と更新の条件
2. 中途解約と違約金
3. 借主が負担する費用(更新料、原状回復、鍵交換など)
4. 特約として定められている事項
5. 資料内で記載が見当たらない項目

【条件】
・各項目に、該当する条項の番号と原文の抜粋を付ける
・条項が有効かどうか、妥当かどうかの判断はしない
・記載が見当たらない場合は推測せず「記載なし」と書く

もう一歩良くなるコツ

原文の抜粋を付けさせる:AIの要約と条文を並べて読めるため、読み違いに気づきやすくなります。/売主や貸主の個人名は伏せてから添付する:契約書案には当事者の氏名や住所が入っています。抜き出した一覧は、重要事項説明の準備で説明漏れを防ぐチェック表としても使えます。

2-5. オーナー報告と入居者向けのお知らせを作る 管理業務では、同じ出来事を「オーナー向けの報告」と「入居者向けのお知らせ」の2種類に書き分ける場面が多くあります。作業記録を1回渡し、2つの文章を同時に作らせると、事実の食い違いを防げます。

以下の作業記録をもとに、2種類の文章を作成してください。

【作業記録】(日時、場所、発生した事象、対応内容、費用、今後の予定を貼り付け)

【文章1:オーナー向けの報告】経緯→対応内容→費用→今後の対応案の順で、400字以内
【文章2:入居者向けのお知らせ】何が起きたか→入居者にお願いしたいこと→問い合わせ先の順で、200字以内

【条件】
・日時と金額は作業記録の表記のまま使う
・原因が記録で確定していない場合は断定せず「調査中」と書く
・入居者向けの文章には、部屋番号や個人を特定できる情報を書かない

もう一歩良くなるコツ

費用の負担区分は書かせない:貸主と借主のどちらが負担するかは、契約書と担当者の判断で決めます。/掲示用とメール用で分量を変える:掲示用は「200字以内」を「100字以内」に変えれば短くなります。報告の型がそろうと、担当者が替わってもオーナーへの説明の質を保ちやすくなります。

3. 不動産会社がChatGPTを活用する前の設定|データの扱いとカスタム指示

2章の指示文は、設定を変えなくても動きます。ただし社内で使い続けるなら、入力データの扱いと、毎回の条件を登録する設定を先に決めておくと安全で手間も減ります。初めて使う段階で1度済ませておく作業です。

3-1. プランによって入力データの扱いが変わる ChatGPTに入力した内容がモデルの学習に使われるかどうかは、プランによって既定値が異なります。個人向けと法人向けで、次のように分かれます。

不動産会社がChatGPTを活用する前の設定・データの扱いとカスタム指示の図。3-1プランによって入力データの扱いが変わる=個人向け(Free・Go・Plus・Pro)は入力内容が学習に利用される(設定のデータ管理で「すべてのユーザー向けにモデルを改善する」をオフにする)、法人向け(Business・Enterprise)は利用されない(管理者がワークスペースの設定を管理)。料金の目安=個人向けPlusは月額20ドル、法人向けBusinessは1ユーザーあたり月額25ドル(年払いは20ドル)、Businessは2ユーザーから契約できる。カスタム指示で毎回の手間を減らす(不動産業界向けのトーンで回答/特定の用語を使わない/出力は200字以内など)。
プラン別の学習の既定値と料金の目安(2人以上で使うなら会社契約のBusinessを候補に)
区分|主なプラン学習への利用(既定値)/設定の方法
個人向け|Free、Go、Plus、Pro利用される/設定の「データ管理」で「すべてのユーザー向けにモデルを改善する」をオフにする
法人向け|Business、Enterprise利用されない/管理者がワークスペースの設定を管理する

設定画面の項目名は、表示によって「データコントロール」「すべての人のためにモデルを改善する」となっている場合もあります。料金の目安は、個人向けのPlusが月額20ドル、法人向けのBusinessが1ユーザーあたり月額25ドル(年払いは20ドル)です。Businessは2ユーザーから契約できます(※2026年9月時点の情報です。最新の料金と機能はOpenAIの公式サイトで確認しましょう)。社員が個人のアカウントで業務に使うと、学習の設定を確かめるのが本人任せになります。2人以上で業務に使うなら、会社として契約するBusinessを候補に入れましょう。

参考(一次情報)

モデルのパフォーマンスを向上させるためのデータの使用方法|OpenAI Help Center/ChatGPT Pricing|OpenAI/Business data privacy, security, and compliance|OpenAI

3-2. 【コピペ用】不動産会社向けのカスタム指示 2章の条件のうち毎回同じものは、カスタム指示に登録しておくと指示文が短くなります。カスタム指示は、すべての会話に自動で反映される初期設定です。設定の「パーソナライズ」(表示によっては「ChatGPTをカスタマイズ」)から登録できます(※2026年9月時点の情報です。画面の名称は変わる場合があります)。

私は【賃貸仲介と賃貸管理】を行う不動産会社の担当者です。回答するときは、次のルールを守ってください。

・私が渡した資料に書かれていない事実(設備、距離、金額、日付、法令の条文)を補わない。不明な箇所は【要確認】と書く
・不動産広告の文章では、「完全」「絶対」「日本一」「最高」「格安」「厳選」「完売」などの語を使わない
・上の語に似た、欠けるところがない・他より優れる・選別した・著しく安い・売れ行きが良いといった印象を与える語も使わない
・徒歩分数、面積、金額は計算し直さず、資料の表記のまま使う
・法令や契約条項の有効性を断定しない。条文に触れるときは条番号を示し、原文の確認を促す
・お客さまへの文章は丁寧な敬語で書き、結果や利益を保証する表現を使わない
・人名や会社名は、私が書いた仮名のまま使う

もう一歩良くなるコツ

自社の表記ルールを1行足す:「お客さま」「〇〇平方メートル」など社内の表記をそろえられます。/物件ごとに資料をまとめる場合はプロジェクト機能を使う:物件資料と指示を会話のまとまりごとに分けて管理できます。カスタム指示の内容も、個人向けプランではモデルの改善に使われる場合があると公式ヘルプに記載されています。顧客名や物件の住所などは登録せず、ルールに絞って書きましょう。登録したあとは、物件紹介文の指示文から特定用語の条件を省いても同じ出力が得られるか、1度試してから運用に乗せましょう(参考:ChatGPT カスタム指示|OpenAI Help Center)。

3-3. ChatGPTに入力しない情報の線引き 学習の設定にかかわらず、入力しない情報を社内で決めておきます。宅建業者は宅建業法45条で、正当な理由なく業務上知った秘密を漏らしてはならないとされ、従業者にも同じ義務があります(75条の3)。

区分|情報の例扱い方
そのまま入力できる|公開済みの物件情報、自社のひな形、一般的な質問設定を確認したうえで入力する
置き換えて入力する|顧客の氏名、住所、勤務先、年収「A様」「〇〇区」「予算の上限」などに置き換える
入力しない|本人確認書類、口座情報、病歴などの要配慮個人情報ChatGPTでは扱わない

個人情報保護委員会は2023年6月2日の注意喚起で、事業者が個人情報を含む指示文を入力する場合、利用目的の範囲内かを確認するよう求めています。本人の同意なく入力した個人データが応答以外の目的で扱われると、法令違反となる可能性があるとも示しました。レインズから取得した情報など、利用規程で使い道が決まっている情報の扱いは、「不動産会社のAI利用ルールの作り方」で社内ルールとあわせて解説しています(参考:生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について(令和5年6月2日)|個人情報保護委員会/宅地建物取引業法|e-Gov法令検索)。

3-4. ChatGPTの機能と料金は変わる前提で確認する ChatGPTは機能の追加と終了が速く、数か月前の解説がそのまま使えない場合があります。社内に案内する前に、次の3点を公式サイトで確かめましょう。

たとえばGPTsを前提に社内へ案内すると、数か月後に作り直しが発生します。社内マニュアルには、参照した公式ページのURLと確認日を残しておきましょう。担当者が替わったときも、どこを見直せば良いかが分かります(※2026年9月時点の情報です。参考:Custom GPT retirement and migration FAQ|OpenAI Help Center/ChatGPT Pricing|OpenAI)。

4. 不動産業務でChatGPTを活用するときの出力チェック

ChatGPTの出力は、そのまま使える完成品ではなく下書きとして扱います。確認する箇所を先に決めておくと、1通あたりの確認にかかる時間を短くできます。

4-1. 確認6項目|ChatGPTの出力で見落としやすい箇所 お客さまやオーナーに出す前に、次の6項目を順に確認しましょう。

不動産業務でChatGPTを活用するときの出力チェック・確認6項目の図。1資料にない事実=設備・周辺施設・距離が足されていないか、2数値と単位=賃料・面積・徒歩分数・日付が元の資料と一致するか、3特定用語=「最高」「格安」などが残っていないか(ページ内検索で語を探すと早い)、4保証表現=「必ず」「資産価値が上がる」など結果を約束する表現がないか、5法令と条文=示された条番号や改正の時期が実在するか(e-Gov法令検索で原文を開く)、6宛先と仮名=他の顧客の情報が混ざっていないか・仮名を実名に戻す位置は正しいか。1から3は広告表示、4と5は説明の正確さ、6は個人情報に関わる確認。とくに1と2はAIがもっともらしく補いやすい箇所。
出力チェック6項目(1と2=AIが補いやすい事実・数値に特に注意)
  1. 資料にない事実:設備、周辺施設、距離が足されていないか
  2. 数値と単位:賃料、面積、徒歩分数、日付が元の資料と一致するか
  3. 特定用語:「最高」「格安」などが残っていないか。ページ内検索で語を探すと早い
  4. 保証表現:「必ず」「資産価値が上がる」など、結果を約束する表現がないか
  5. 法令と条文:示された条番号や改正の時期が実在するか。e-Gov法令検索で原文を開く
  6. 宛先と仮名:他の顧客の情報が混ざっていないか。仮名を実名に戻す位置は正しいか

1から3は広告表示、4と5は説明の正確さ、6は個人情報に関わる確認です。とくに1と2は、AIがもっともらしく補いやすい箇所です。

4-2. 契約書・重要事項説明書をChatGPTに作らせない理由 契約書と重要事項説明書は、ChatGPTに作成させる対象から外します。重要事項説明書(35条書面)と契約締結時の書面(37条書面)は、宅地建物取引士が記名する書面として宅建業法で定められているためです。ChatGPTに「賃貸借契約書を作成してください」と頼むと、形式の整った書面が返ってきます。見た目が整っているぶん、物件ごとの法令上の制限や特約の抜けに気づきにくくなります。

契約書類は、業界団体の書式や自社のひな形をもとに作成し、宅地建物取引士が確認する流れを変えないのが基本です。ChatGPTを使うのは、2-4のように確認事項を抜き出す場面や、お客さまへの説明を分かりやすく言い換える場面にとどめましょう(参考:宅地建物取引業法(第35条・第37条)|e-Gov法令検索)。

5. 不動産会社のChatGPT活用を開発・専用サービスへ広げる判断

5業務が定着したあと、「お客さまからの問い合わせにもAIで答えたい」という声が出てくる場合もあります。そこから先は、画面での活用とは準備の種類が変わります。

5-1. チャットボットや物件提案の自動化に必要なもの 問い合わせの自動応答や物件の自動提案は、APIを使った開発か、専用サービスの契約で実現します。APIとは、ほかのシステムからChatGPTの機能を呼び出す仕組みです。必要になるのは、次の3つです。1つ目は、回答のもとになる自社データの整備で、物件情報やよくある質問の回答を最新の状態に保つ体制を指します。2つ目は、誤った回答をした場合に担当者へ引き継ぐ流れです。3つ目は、利用量に応じた料金と、開発・保守の費用です。

画面での活用と開発の間には、社内で指示と資料を共有する段階もあります。Businessプランでは、プロジェクトをメンバーと共有する機能が提供されています。3-2のカスタム指示と2章の指示文を共有プロジェクトにまとめると、担当者ごとの出力のばらつきを抑えられます(※2026年9月時点の情報です)。なお、以前はこの用途にGPTsが使われていました。OpenAIはGPTsを2026年12月11日に終了する予定と案内しているため、これから新しく作る用途には向きません。

5-2. ChatGPTの活用を広げない方が良い4つのケース 判断の対象は、どのサービスにするかに限りません。次に当てはまる場合は、開発や専用サービスへの投資を見送るか、時期をずらすほうが結果的に活用が進みます。

見送る場合も、2章の指示文とカスタム指示を社内で共有しておくと、次に検討するときの土台になります。チャットボットで答えさせる範囲の決め方は「不動産チャットボットAI|答えさせない質問の決め方」で詳しく解説しています。

6. 不動産のChatGPT活用方法についてよくある質問

Q. 無料版のChatGPTでも、この記事の指示文は使えますか?

A. 使えます。無料版には利用回数やファイルのアップロードに上限があるため、毎日の業務で使うと上限に届く可能性があります。まず無料版で5業務のどれが自社に合うかを試し、使う頻度が見えてから有料プランを選ぶ順番がおすすめです(※2026年9月時点の情報です)。

Q. ChatGPTとGemini、Claudeのどれを使えば良いですか?

A. 2章の5業務は、どの生成AIでも同じ指示文で試せます。選ぶ軸は、社内で使っている環境です。GmailやGoogleドライブを使う会社ならGemini、Microsoft 365中心の会社なら同じ考え方でCopilotも候補になります。資料が置いてある場所に近いAIを選ぶと、貼り付けの手間が減ります。

Q. 情報漏えいが心配です。ChatGPTに社外秘を入れて大丈夫ですか?

A. まず3-1の学習オフ設定(個人向けプランは既定で学習に利用されるためオフにする)を済ませ、3-3の「入力しない情報」(本人確認書類・口座情報・病歴などの要配慮個人情報)を社内で線引きします。宅建業者には宅建業法45条の守秘義務があり、従業者にも同じ義務が及びます(75条の3)。顧客名は仮名に置き換えたうえで入力しましょう。

Q. スマホアプリでも使えますか?

A. 使えます。2章の指示文はスマホのChatGPTアプリでも同じように動きます。ただし、契約書などのファイルを添付して確認事項を抜き出す作業や、出力を資料と突き合わせる確認は、画面の広いPCのほうが向いています。外出先ではメモ取りや下書き、社内ではPCで確認、と使い分けると効率的です。

Q. ChatGPTで作った物件紹介文を、ポータルサイトに載せても問題ありませんか?

A. AIで作ったかどうかにかかわらず、広告の表示内容に責任を持つのは広告を出す不動産会社です。4-1の確認を終えたうえで、掲載するポータルサイトの掲載基準も確認しましょう。

Q. 外国籍のお客さまへの連絡にも使えますか?

A. 英語や中国語などの連絡文の下書きには使えます。ただし契約条件や費用の説明は、日本語の原文を正とし、訳文との食い違いを確認してから送りましょう。訳文を日本語に訳し戻させると、意味のずれに気づきやすくなります。

7. まとめ

まずは担当物件を1つ選び、2-1の指示文で物件紹介文を2案作ってみましょう。条件を付けた場合と付けない場合の違いが、自社の広告の確認ポイントとして見えてきます。

【本記事のご利用にあたって】

AIが作成した文章を業務で使用する際は、宅地建物取引業法や景品表示法、不動産の表示に関する公正競争規約に抵触する表現がないか、宅地建物取引士など有資格者による最終確認をお願いいたします。重要事項説明書・37条書面など宅地建物取引士の記名が必要な書面は、AIに作成させないでください。また、お客さまの個人情報は仮名化したうえ、学習に使われない設定でご利用ください。AIの機能・料金は変更されることが多いため、記事の公開前に公式サイトで最新情報のご確認・更新をお願いいたします。本記事はAI活用の実務的な解説を目的とし、法的アドバイスを提供するものではありません。

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この記事を書いた人

藤田 遼(株式会社WIG 代表/宅地建物取引士)
不動産業界での実務経験をもとに、現場でそのまま使える生成AIの活用法を研究・発信。「今日からコピペで使える」を合言葉に、不動産特化のAIノウハウを届けています。