国土地理院 AIに「国の地理・不動産データ」を自動で調べさせる
地理空間MCPサーバー (α版)非エンジニア向け導入ガイド

国土交通省が公開した「地理空間MCPサーバー(α版)」を、自分のパソコンのClaude Desktopから使えるようにするまでの全手順を、専門用語をかみくだいて解説します。実際の作業中に出たエラーと直し方もそのまま掲載しました。

ひとことで言うと、「AI(Claude)に、国の地理・不動産データを自動で調べさせる仕組み」を自分のパソコンに組み込みました。 「○○駅周辺の土地価格とハザード情報は?」のように日本語で聞くだけで、AIが適切なデータを自動で取りに行ってくれるようになります。

1. そもそも何をしたの?(30秒でわかる概要)

MCP(エムシーピー)は、AI(Claude)と“外部の道具やデータ”を安全につなぐための共通ルール(規格)です。ふだんのClaudeは、自分が学習した知識の範囲でしか答えられません。そこでMCPを使うと、「特定のデータの取り出し口」をClaudeに追加できます。たとえるなら、壁にコンセント(差込口)を増やすようなもの。差込口の規格さえ合えば、いろいろな機器をつなげますよね。MCPはこの“差込口の共通規格”にあたり、今回はそこに国土交通省の地理空間データ(土地の価格やハザード情報など)をつなぎました。これでClaudeは、必要なときにこのデータへ自分でアクセスして答えられるようになります。

つないだサーバー

地理空間MCPサーバー(MLIT Geospatial MCP Server)。国土交通省が2025年2月に公開したαバージョン(お試し版)です。データ元は国土交通省の不動産情報ライブラリ(公式)、プログラムはGitHubの配布ページで公開されています。

できること

「○○駅周辺の土地価格とハザード情報は?」のように日本語で聞くだけで、AIが適切なデータを自動で取りに行きます。

料金について

ソフト自体は無料(オープンソース/MITライセンス)です。国のデータ利用も、無料の申請で使えます。

2. 作業の全体像(4つのステップ)

難しそうに見えますが、やることは大きく4つだけです。料理にたとえると分かりやすくなります。

ステップやること(たとえるなら)
① 準備必要な道具をそろえる:Python・Claude Desktop・APIキー(料理の前に材料と道具をそろえる)
② 入手サーバーのプログラムをダウンロードする(レシピと食材セットを取り寄せる)
③ 準備動かすための部品をインストールする(下ごしらえをする)
④ 設定Claudeにつなぐ設定ファイルを書く(味を調えて器に盛りつけ、食卓に出す=仕上げ)

3. 準備するもの

作業を始める前に、次の4つをそろえます。特に「APIキー」は発行に時間がかかることがあるため、最初に申請しておくのがおすすめです。

準備するもの役割(やさしい説明)
Python 3.10以上サーバーを動かすための土台ソフト。python.org から入手します。
Claude DesktopAI本体(ここから質問する)。claude.com/download から入手します。
APIキー国のデータを使うための「会員証」。不動産情報ライブラリの API利用申請ページ で無料申請します。
インターネット接続プログラムやデータの取得に必要です。

用語:APIキーって何?

「データを使ってよい人だと証明する、長い合言葉(パスワードのようなもの)」です。API利用申請ページ で無料申請すると発行されます。他人に見せてはいけません。

4. プログラムの入手と準備

ここからは「①サイトからのダウンロード」と「②ターミナルでの簡単な操作」を行います。ターミナルがはじめての方でも進められるよう、開き方から丁寧に説明します。

1. プログラムを入手する(サイトからDownload ZIP)

まず、プログラム一式をGitHubのサイトからダウンロードします。下のリンクを開いてください(図1を参照)。

図1:GitHubページ右上の「Code」→「Download ZIP」からダウンロードする

はじめに:ターミナルとは?開き方(Mac)

このあと(手順2・3)は「ターミナル」という、文字でパソコンに指示を出すアプリを使います。本記事はMac向けの画面で解説します。開き方は2通り。①「Finder → アプリケーション → ユーティリティ → ターミナル」をダブルクリック。②「⌘(コマンド)+スペース」で検索窓(Spotlight)を開き、「ターミナル」と入力してEnter。黒っぽい画面が開けばOKです。

Windowsの方へ(「ターミナル」は「コマンドプロンプト」)

Windowsでは「ターミナル」の代わりに「コマンドプロンプト」を使います。開き方は、画面下のスタートボタン横の検索窓に「cmd」と入力してEnter(黒い画面が開けばOK)。基本の流れはMacと同じで、フォルダへの移動(cd +ドラッグ&ドロップ)も同様です。ただし次の3点だけコマンドが異なります。①Pythonの実行は「python3」ではなく「python」と打ちます。②作業スペースに入る(手順3の2行目)は「.venv\Scripts\activate」に置き換えます。③設定ファイル(5章)の場所は「%APPDATA%\Claude\claude_desktop_config.json」で、開くときは「notepad %APPDATA%\Claude\claude_desktop_config.json」と入力します。

ターミナルを開くと、左側に「ユーザー名@パソコン名 〜 %」のように表示されます。この「%」の右側(図2の丸印の位置)にカーソルがある状態で、これから出てくる文字をコピーして貼り付け(⌘+V)、最後にEnterキーを押す——これが基本操作です。

図2:ターミナルを開いた状態。丸印の位置(「%」の右)に文字を貼り付けて、Enterキーを押します

2. 解凍したフォルダに「移動」する

まず、解凍した「mlit-geospatial-mcp」フォルダの場所をターミナルに教えます。次の3操作だけです。

3. 作業スペースを作り、部品を入れる

続けて、下の3行をターミナルに貼り付けます。1行ずつ貼り付けてEnterでも、まとめて貼り付けてEnterでもOKです。

python3 -m venv .venv
source .venv/bin/activate
pip install -r requirements.txt

5. Claudeにつなぐ「設定ファイル」を書く

ここはターミナルに打ち込む作業ではありません

この章は、ターミナルにコマンドを入力する作業ではなく、「設定ファイル」というテキストを開いて、中身を書き換えて保存する作業です。Claude Desktopに「このサーバーを使ってね」と教えるための、最後の仕上げになります。ここが今回いちばんつまずきやすいポイントでした。

設定ファイルを開く方法は2通りあります。(A)Claude Desktopのメニューから:「設定」→「開発者」→「設定を編集」をクリック。(B)ターミナルから開く:下のコマンドをターミナルに貼り付けてEnterを押すと、設定ファイルがテキストエディタで開きます。

open -e ~/Library/Application\ Support/Claude/claude_desktop_config.json

開いたファイルに、次の内容を書き込んで保存します(これはターミナルではなく、開いたテキストファイルに貼り付けます)。

{
  "mcpServers": {
    "mlit-geospatial-mcp": {
      "command": ".../.venv/bin/python",
      "args": [".../src/server.py"],
      "env": {
        "LIBRARY_API_KEY": "あなたのAPIキー",
        "PYTHONUNBUFFERED": "1",
        "LOG_LEVEL": "WARNING"
      }
    }
  }
}

いちばん大事なルール(JSONの鉄則)

設定ファイルの中身は、ぜんぶで「{ から } までのひとつのカタマリ」に収めること。すでに他の設定がある場合は、消さずに“その中に追記”します。カタマリを2つ並べるとエラーになります(次章のトラブル②)。

保存したら、最後に Claude Desktop を ⌘Q で完全に終了し、もう一度起動すると設定が反映されます。

6. うまくいったか確認する

再起動後、Claude Desktopで次のように日本語で聞いてみます。

例: 新宿駅周辺の地価公示と洪水ハザード情報を教えて

成功の合図

AIが自動でデータを取りに行き、回答すれば成功です。今回の作業でも、設定後にサーバーが正しく認識され、地理空間データのツールが使える状態になったことを確認できました。

7. つまずいた点と直し方(実録)

実際の作業中に出た2つのエラーと、その原因・対処をそのまま記録しました。同じ場面で役立ちます。

トラブル① zsh: parse error near }内容
症状ターミナルに設定の文章を貼ったらエラーが出た。
原因設定ファイルの中身({ } の文章)を、コマンドだと思ってターミナルに貼り付けてしまった。これは“ファイルに保存する文章”であって、実行するものではない。
対処ターミナルではなく、設定ファイル(claude_desktop_config.json)を開いて、その中に貼り付けて保存する。
トラブル② Unexpected non-whitespace character内容
症状Claudeが設定ファイルを読めず、解析エラーになった。
原因もともと入っていた設定の“うしろ”に、新しい設定をもう1カタマリ貼り付けてしまった。{ } のカタマリが2つ並び、ルール違反になった。
対処既存の設定を消さず、その“中”に mcpServers を追記して、全体を1つの { } にまとめ直した。最後に書式チェックをして正常を確認。

教訓(3つ)

① 設定ファイルの文章は「ターミナルで実行」ではなく「ファイルに保存」する。② 既存の設定がある時は“置き換え”ではなく“中に追記”する。③ 編集後は必ず書式(JSON)が正しいかチェックする。

8. 取り出せるデータ一覧

このMCPサーバーを通じて、AI(Claude)に取り出させられる主なデータは次のとおりです。国土交通省「不動産情報ライブラリ」が公開するWeb APIに対応しており、価格・都市計画・災害リスク・周辺施設・人口まで幅広くカバーします。

分野取り出せる主なデータ(例)
価格・評価不動産の取引価格・成約価格、地価公示・地価調査、鑑定評価書
都市計画用途地域、区域区分、立地適正化計画、防火・準防火地域、地区計画、高度利用地区、都市計画道路
災害・ハザード洪水・高潮・津波の浸水想定区域、土砂災害警戒区域、災害危険区域、液状化の発生傾向、大規模盛土造成地、地すべり・急傾斜地、指定緊急避難場所、災害履歴
周辺施設学校・小中学校区、保育園・幼稚園、医療機関、福祉施設、図書館、市区町村役場・集会施設、自然公園
人口・交通将来推計人口(250mメッシュ)、人口集中地区、駅別乗降客数
基礎情報全国の市区町村コード一覧

最新の対応データ・詳細について

本記事の公開時点(2026年6月)で、約35種類のWeb APIが公開されています。最新の対応データや各APIの詳しい仕様は、公式の不動産情報ライブラリ APIマニュアルでご確認いただけます。

9. ひとことで分かる 用語集

用語やさしい意味
MCPサーバーAIに“データや道具の差込口”を増やす仕組み。
Claude Desktopパソコンで動くAIアプリ。ここから質問する。
Pythonプログラムを動かす土台ソフト。
ターミナル文字でパソコンに命令する画面。
Download ZIPプログラム一式を圧縮ファイルでまとめて入手する操作。解凍して使う。
仮想環境(venv)このサーバー専用の作業“個室”。
APIキーデータを使う許可を示す合言葉(要・秘密管理)。
JSON設定を書くための、決まった書式の文章。

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この記事を書いた人

藤田 遼(株式会社WIG 代表/宅地建物取引士)
不動産業界での実務経験をもとに、現場でそのまま使える生成AIの活用法を研究・発信。「今日からコピペで使える」を合言葉に、不動産特化のAIノウハウを届けています。